目次 II-8


8 役員給与の業績悪化改定事由の明確化など

 経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(業績悪化改定事由)によりされた定期給与の減額改定があった場合には、その改定前後の各支給時期における支給額が同額であるときは、定期同額給与に該当することとされています。一方、減額改定が業績悪化事由によらない場合には定期同額給与の要件を満たさず、損金不算入とされる部分の金額が生じることになります。

 この経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由には、一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどは含まれないこととされていますが、厳しい経済環境の下、役員給与の減額を行う法人が多くなってきたことから、この解釈について明確化が図られました。また、これにあわせて、その他の役員給与の取扱いも公表されています。


  業績悪化改定事由に該当する例
(a) 株主との関係上、業績悪化などについての経営上の責任によるもの 株主が不特定多数である法人(一般には公開会社)は、業績悪化が直ちに役員の評価に影響するのが一般的。ホームぺージやプレスリリースなどで公開される。
(b) 銀行との借入金返済のリスケジュール協議において役員給与の減額をせざるを得ない場合 単に一時的な資金繰りの都合によるものでなく、協議状況等により明らか。
(c) 業績等が悪化したため、利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から経営状況の改善を図るための計画が策定され、この計画に役員給与の減額が盛り込まれた場合 その策定された計画が、外部の利害関係者から開示等の求めがあればこれに応じられるようなものである場合には、この経営改善計画によって一時的な資金繰りの都合などによるものでないことが明らかにされる。

(注)  なお、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、業績悪化改定事由には該当しません。


  その他の定期同額給与の取扱い
(a) 例えば、6月25日に給与改定がされた場合、6月30日支給分から改定後の金額を支給しなければ、定期同額給与とならないのか。また、7月31日支給分から支給した場合はどうなるのか。 7月31日支給分から改定後の金額を支給することも一般的であるので、6月30日支給分からの改定でも7月31日支給分からの改定でもいずれの場合でも定期同額給与に該当する。
(b) 複数回の改定が行われた場合、定期同額給与の判定を行う時期はどのようになるのか。 法人税法施行令第69条第1項第1号に掲げる改定ごとに区分された期間によって、定期同額給与の判定を行う。
(c) 定時株主総会等で役員給与について決議をしていない場合で、その後単なる減額改定を行ったときには、損金不算入額はどのように計算するのか。 役員給与を前年と同じとする場合、その支給額についての決議をしないという企業慣行がある。これは役員給与を同額とする改定の決議があったのと同様と考えられる。したがって、その後単なる減額改定があった場合の遡り計算は、定時株主総会までとなる。
(d) 入院中、職務の執行が一部できないため、役員給与を減額した。なお、入院中は傷病手当金を受け取っている。 入院により職務の執行が一部できないことは、職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情として臨時改定事由に該当するので、定期同額給与に該当する。なお、傷病手当金の受給と役員給与の減額は別個の判断となる。

 

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