目次 IV-2


2 取引相場のない種類株式の相続税等の評価方法の明確化

 会社法の下で活用の幅が広がった種類株式は、中小企業の事業承継においてもその活用が期待されていますが、相続税法上の評価方法が不明確であるため活用が進まないとの指摘があります。そこで、中小企業の事業承継において活用が期待される典型的な種類株式(以下の盧から蘯まで三類型)の相続税法上の評価方法が、以下のとおり通達改正(国税庁より年度内公表予定)により明確化される予定です。


(1)配当優先の無議決権株式
 普通株式と同様に評価することが原則(純資産価額方式の場合には配当優先の度合いに関わらず普通株式と同額評価)。
 ただし、相続時の納税者の選択により、相続人全体の相続税評価総額が不変という前提で、議決権がない点を考慮し、同族株主が相続し、株式を取得した同族株主の全員が同意した場合には、無議決権株式について普通株式評価額から5%を評価減することも可能とする。(無議決権株式の評価減分を議決権株式に加算)
(2)社債類似株式(一定期間後に償還される特定の無議決権+配当優先株式)
 以下の条件を満たす社債に類似した特色を有する種類株式は、社債に準じた評価(発行価額と配当に基づく評価)を行う。
 [1]優先配当、[2]無議決権、[3]一定期間後に発行会社が発行価額で取得、[4]残余財産分配は発行価額を上限、[5]普通株式への転換権なし
(3)拒否権付株式
   拒否権付株式(普通株式+拒否権)は、普通株式と同様に評価する。


【典型的活用方法】
財産の大半が自社株式である中小オーナー経営者が、後継者に経営権を集中させたいが、複数の相続人がいる場合 (1)又は(2)を発行し、無議決権株式を非後継者に相続、普通株式(議決権有)を後継者に相続
中小オーナー経営者が、承継後の経営安定のため、一定期間は後継者の独断専行経営を防げる形にしておきたい場合 拒否権付株式を発行・保有し、後継者への権限委譲後一定期間は保有


改正の効果  評価方法明確化により予測可能性が高まり、種類株式の活用が大いに促進され、事業承継の円滑化に資することができるようになります。

 

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