目次 I-6-3


3 移転価格税制の改善措置

 移転価格税制とは、企業とその企業の国外関連法人との取引価格を通常の取引価格(独立企業間価格)で計算し直すことにより、国外関連法人との取引を通じた所得の海外移転を防止する制度をいいます。

 国外関連法人との取引は国際取引の約7割を占め、近年、我が国において、国税当局による移転価格税制に係る更正処分件数及び更正所得金額は増加傾向にあります。二重課税の防止の措置として二国間の相互協議の制度が、予見可能性の担保する措置として事前確認制度が設けられていますが、相当の日時を要するのが実態です。そこで、今年の税制改正では、納税猶予制度が創設され、事前確認制度の見直しが行われます。


(1) 納税猶予制度の創設

 租税条約の相手国との相互協議の申立てをした場合において、その申立てをした者が申請をしたときは、更正又は決定に係る国税(相互協議の対象となるものに限ります。)及びその加算税の額につき、その納期限(申請が納期限後であるときは、申請の日)から相互協議の合意に基づく更正があった日(合意が行われなかった等の場合には、国税庁長官がその旨を通知した日)の翌日から1月を経過する日までの期間、納税の猶予が認められます。納税を猶予する場合には、猶予する金額に相当する担保が徴されます。


(2) 延滞税の免除

 納税の猶予をした国税に係る延滞税のうち猶予期間(申請の日が猶予した国税の納期限以前の日である場合には、申請の日から納期限までの期間を含みます。)に対応する部分は、免除されます。


適用期日
 上記の改正は、平成19年4月1日以後に行われる申請について適用されます。
 納税の猶予が終了した時には、確定した本税及びその加算税を納付することになります。なお、事前確認で確認された内容に従った自主的な修正申告に係る税額には、加算税は課されません。


(3) 事前確認制度の見直し及び運用の明確化

 国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる移転価格税制)に係る事前確認及びその事前相談について、申請手続の円滑化及び執行体制の整備が図られます。また、移転価格課税上の適用の明確化に向けた取組みも引き続き進められます。


改正の効果  税猶予制度の創設による企業の負担が軽減され、事前確認制度の見直し及び運用の明確化による企業の予見可能性が向上することによって、我が国企業の国際展開の円滑化が図られます。

 

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