目次 I-6-1


 六 その他の法人税制の改正


1 三角合併等

 平成18年5月1日から施行されている会社法では、吸収合併、吸収分割又は株式交換の場合において、消滅会社の株主等に対して、存続会社等の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することができることになり(会社法749(1)二、758四、768(1)二)、次の組織再編が可能となりました。これを「対価の柔軟化」といいます。

(1) 三角合併等
 三角合併等とは、他の会社を吸収合併等する場合に、消滅会社の株主等に対して、存続会社の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を交付して行う合併のことをいいます。この三角合併等により、外国企業の在日子会社が日本法人を吸収合併しやすくなります。

(2) キャッシュ・アウト・マージャー
 消滅会社の株主等に金銭のみを交付する合併のことをいいます。存続会社の株主の出資比率を維持したまま合併等を行うことができます。

 このうち、三角合併等については、敵対的買収に対する企業防衛策を採用する機会を確保するため、その適用時期が会社法の施行の日から1年間延長され、平成19年5月1日から施行されることとなっていました(会社法附則4)。これに伴い、今年の税制改正で、この三角合併等に関する課税の繰延べの要件が明確化されることになりました。


【三角合併の例】

(経済産業省・平成18年12月「平成19年度税制改正について」より)


【現行の課税関係】

原則 企業組織再編により資産等の移転があった場合には、移転資産のすべてに対して譲渡損益を認識します。
例外 企業組織再編が税制適格となる場合には、移転資産のすべての譲渡損益課税は繰り延べられ、帳簿価額により移転があったものとされます。


〔税制適格の要件(合併の場合)〕

[1] 合併対価の要件

 合併法人の株式のみが交付されること(合併法人以外の資産、例えば、現金等が交付されないこと)

[2] 合併当事者間(被合併法人と合併法人)の要件

適用グループの合併 共同事業を営むための合併
100%グループ内 50%超グループ内
100%関係の継続
50%超関係の継続
従業者の継続従事
(80%以上)
主要な事業の継続
合併法人株式の継続保有
事業関連性
事業規模が5倍を超えないこと又は特定役員の引継ぎ
従業者の継続引継ぎ(80%以上)
主要な事業の継続


【三角合併等の課税関係(平成19年度税制改正)】

(1) 適格要件

 三角合併等が認められることに伴い、現行の原則・例外の枠組みは維持されたまま、三角合併等の場合の課税関係のみが追加的に規定されました。合併等の対価として100%親会社の株式が交付された場合に限り、現行の組織再編税制の枠組みに沿って、資産の移転に伴う譲渡損益の課税の繰延べと、被合併法人等の株主における旧株の譲渡損益の課税の繰延べが認められることとなります。

〔税制適格の要件(合併の場合)〕

[1] 合併対価の要件

 次のいずれかであること

  ・合併法人の株式のみが交付されること
  ・合併法人の親法人(注)の株式のみが交付されること(追加部分)

 (注)  合併の直前に合併法人の発行済株式の全部を直接に保有し、かつ、合併後にその発行済株式の全部を直接に継続して保有することが見込まれる法人をいいます。


[2] 合併当事者間の要件

 共同で事業を行うための組織再編成に該当するか否かを判定する要件である「事業性」及び「事業関連性」について、運用面での取扱いの明確化を図るため、その判断基準を法令上明記する方向で具体的に検討が行われます。


(2) 非居住者・外国法人株主の取扱い

 被合併法人の非居住者等株主が旧株の対価として海外で流通する株式を取得する場合にまで旧株の譲渡益の課税の繰延べを認めると、その後においてその外国親会社の株式を海外等で譲渡した場合に、わが国で課税されない可能性があります。そこで、原則として、譲渡益に課税することに なります。

原則 合併等により被合併法人の株主に外国親会社の株式が交付され、その株主が非居住者又は外国法人株主(以下「非居住者等株主」といいます。)である場合は、その合併等の時に旧株(被合併法人株式)の譲渡益(注1)に対して課税されます(注2)。
例外 旧株が国内に恒久的施設を有する非居住者等株主が国内において行う事業に係る資産として管理するものである場合は、譲渡益課税は行われません。

(注1)  わが国で課税の対象となる国内源泉所得に該当するものに限ります。
(注2)  国内に恒久的施設を有する非居住者等株主がその交付を受けた外国親会社の株式を国内において行う事業に係る資産として国内の恒久的施設において管理しなくなったときは、その時に外国親会社の株式を譲渡したものとして課税されます。


改正の効果  新たに制度化された三角合併等について課税の繰延べが可能となり、経済環境の変化に柔軟に対応した企業経営の一層の促進を図ることができるようになります。

適用期日  この改正は、平成19年5月1日以後に行われる合併等について適用されます。


 

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