目次 I-5-2


2 信託を利用した租税回避への対応その他の信託課税の適正化措置

(1) 受益者における法人税課税

 法人(公共法人又は公益法人等を除く。)が委託者となる信託のうち、次のいずれかの要件に該当するものについては、その受託者に対し、信託財産から生ずる所得について、当該受託者の固有財産から生ずる所得とは区別して法人税が課税されます。

 [1]  法人の事業の全部又は重要な一部(会社資産の5分の1)を信託し、自社の株主等に受益権の過半数を交付することが見込まれる場合(法人税の課税が回避されます。)

 [2]  受託者がその法人又はその法人の特殊関係者であり、かつ、その信託期間が20年を超える信託を設定した場合(長期間、課税が回避されます。)

 [3]  受託者が当該法人又はその特殊関係者であり、かつ、その受益権の一部を当該法人の特殊関係者が保有する信託で、当該特殊関係者に対する損益の分配割合が変更可能であること(グループ企業間で損益を付け替えることにより、課税所得を圧縮できます。)


(2) 信託から生ずる損失の制限

発生時受益者課税が適用される個人受益者 信託に係る不動産所得の金額の計算上生じた損失 なかったものとみなされます。
(損益通算ができません。)
発生時受益者課税が適用される法人受益者 信託損失のうち信託金額を超える部分の金額 損金の額に算入されません。
損失補てん契約等により信託期間終了までの間の累積損益が明らかに欠損とならない場合 信託損失の全額を損金の額に算入されません。


(3) 合同運用信託

 合同運用信託の範囲が適正化されます。

適用期日  上記の改正は、原則として、新信託法の適用を受ける信託について適用されます。


(4) その他所要の整備

 上記の改正のほか、所得税、法人税、登録免許税、消費税、国税通則法、国税徴収法や調書等に関する整備が大幅に行われます。


 なお、信託税制については、信託法改正後の信託の利用実態を踏まえつつ、信託制度の発展及び租税回避防止の観点から、必要な見直しが引き続き検討されます。

 

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