目次 II-2-3


3 役員給与の損金算入制度の見直し等

 平成18年5月施行の「会社法」では、役員報酬・賞与が職務執行の対価として一本化されます。一方で、最低資本金制度の撤廃等により個人事業者が法人形態を選択することが容易になってきます。

 このため、役員給与について、いわゆる定期定額要件が緩和されることとなり、あらかじめ確定した時期に確定した金額を支給する非業績連動型の役員給与については損金算入が認められることとなり、また一方で、実質的な一人会社のオーナーへの役員給与について、経費の二重控除に相当する給与所得控除相当部分の法人段階での損金算入が制限されることとなります。

 なお、業績連動型の役員給与は、原則として損金不算入ですが、透明性・適正性を確保するための一定の要件を満たせば損金算入が可能となります。


[1] 定期定額要件の緩和

 法人がその役員に対して支給する給与のうち、1月以下の期間を単位として定期的に同一の額を支給する給与(定期定額要件)に加えて、利益を基礎として算定される給与以外の給与のうち、確定した時期において確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与の額は、原則として、損金の額に算入されることになります。








  現 行
定期の給与
月以下の期間を単位
として規則的に反復
又は継続して支給さ
れるもの
報 酬
臨時的な給与 退職給与
他に定期の給与を受けていない
者に対して毎年所定の時期に
支給する定額の給与
そ  の  他
(賞与⇒損金不算入)
改正案
確定時確定額(損金算入)
そ  の  他
(賞与⇒損金不算入)

現 行
1月以内の期間を単位として、
定期的に同一の額を支給する
役員給与だけを損金算入
改正案
あらかじめの定めに基づいて確定時期に確定額を
支給する役員給与を損金算入
(注)業績非連動型の役員給与に限る。


[2] 業績連動型の役員給与に対する税務上の取扱いの見直し

 利益を基礎として算定される(業績連動型)の役員給与は、原則として、損金不算入ですが、算定手続等の透明性・適正性が確保された一定の要件を満たす業績連動型の役員給与については、損金算入が可能となります。

 透明性・適正性を確保するための主な要件としては、次のようなことがあげられます。

業 績 連 動 型 報 酬
現 行

原則として

損金算入
不 可


改正案
透明性・適正性を担保するための要件を満たしたものであれば損金算入可能
(主な要件)
(1)  その法人が非同族会社であること。
(2)  確定額を限度として、客観的な計算方法により算定されるものであること。
(3)  (2)の算定方法について、報酬委員会による決定等の適正な手続がとられていること。
(4)  (2)の算定方法が、有価証券報告書等で開示されていること。
(5)  業務を執行する他の役員の役員給与について、(2)から(4)までと同様の要件を満たすものとされていること。
(6)  その事業年度において損金経理されていること。 等


[3] 実質的な一人会社オーナーの役員給与の給与所得控除部分の損金不算入措置

 同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が、発行済株式の総数の90%以上の数の株式を所有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合には、その業務を主宰する役員に対して支給する役員給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金不算入とされます。

 ただし、その同族会社の所得等の金額(所得金額と所得金額の計算上損金の額に算入されたその給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合及びその平均額が年800万円超年3,000万円以下であり、かつ、その平均額に占めるその給与の額の割合が50%以下である場合は、適用除外となります。

適用期日
これらの改正は、平成18年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

現 行
 個人事業者が法人成りをすれば、オーナーの役員給与について、法人段階では損金算入ができ、個人段階では給与所得控除が利用可能となり、経費の二重控除となる
改正案

適用対象会社
同族会社の業務を主宰
する役員(オーナー)
及びその同族関係者等
発行済株式の総数の
90%以上所有
かつ
常務従事役員の
過半数を占める
適用除外 所得等の金額(その同族会社の所得金額+オーナー給与)の直前3年間平均額が、(1)又は(2)の場合
(1)年800万円以下 (2)年800万円超3,000万円以下で、
かつ、
オーナー給与 ≦50%
所得等の金額

 

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