第2部 第3章 Q40 |
Q40 超過物納による還付 |
相続財産に十分な金融資産がなく、相続税を全額納付することができないことから土地を物納しようと思います。ただし、相続税の金額に見合う適当な土地がないために超過物納となってしまいますが、超過して物納した部分の還付を受けることはできますか。また、この場合に留意すべき点があれば教えてください。 |
相続税を物納する場合には、物納申請税額を超えないように財産を選択する必要がありますが、やむを得ない事情により税務署長の許可を受けて超過物納をした場合には、その超過部分については、金銭により還付を受けることができます。ただし、物納許可限度額部分の所得税は非課税ですが、超過物納部分については譲渡所得税が課されますのでご留意ください。 1 物納が認められる場合 相続税は、その申告期限までに現金で一括納付することが原則となっていますが、課税対象が財産であることや、納付税額が他の税金と比較して大きくなることなどから、金銭で一時に納付することが困難な場合には、特別な納税方法として延納や物納といった制度が認められています。 「延納」とは一時に納付困難な相続税額を何年かに分割して納める制度であり、「物納」は、延納によっても納付困難な相続税額について、相続により取得した財産そのもので納める制度をいいますが、いずれの制度についても、申告書の提出期限までに申請書等を提出して所轄税務署長の許可を受ける必要があります(相法38〜48)。
ですので、ご質問の場合にもまずは延納により納税できる金額を計算し、残りの税額について物納を認めてもらうという順序になります。 2 やむを得ず超過物納となる場合 (1)超過物納が認められる場合 相続税の納税において物納申請をする場合には、相続税額を超える価額の物納は原則として認められていないため、物納財産の価額が物納申請税額を超えないように財産を選定しなければなりません。 したがって、ご質問のように物納しようとする財産が土地しかなく、その土地の相続税評価額が物納申請税額を超えるような場合には、まずは物納申請税額に見合う価額になるように土地を分割する必要があります。ただし、土地の分筆はその後の財産の利用や価額に大きな影響をもたらすため、分筆せずに物納し、超過部分が発生することについてやむを得ないと税務署長が判断した場合には、その金額を超えて物納することができます(相法41)。 (2)やむを得ない理由 このように超過物納は物納財産の性質・形状その他の特徴により、物納申請税額を超える価額の財産を物納することについてやむを得ない場合にのみ認められますが、この場合の「やむを得ない事情」とは次のような場合をいいます(相基通41−3)。
したがって、分筆をしたことにより物納後の残地の面積が極端に小さくなってしまったり、間口が狭い土地のため分筆すると物納地、残地ともに有効活用できなくなってしまったりするような場合で、その土地を物納する以外に納税が困難なときには超過物納が認められると考えられます。 3 超過物納による還付 物納許可限度額を超えて、財産の物納が許可された場合には、納付すべき相続税額と物納財産の収納価額との差額が超過物納による過誤納金として金銭で還付されます(相基通41−4)。 4 還付金の取扱い (1)譲渡所得税の課税 超過物納が認められて金銭還付を受けた場合には、物納した土地のうち、物納許可限度額に相当する部分の譲渡はなかったものとされますので、譲渡所得税は課税されませんが(措法40の3)、超過物納による過誤納金として金銭により還付された部分については、通常の土地の譲渡の場合と同様に譲渡所得税の課税対象となります。
(2)適用できる特例 超過物納による金銭還付部分は譲渡所得を構成しますが、国に対する譲渡に該当するため、譲渡所得税の計算においては次の減額特例が適用できますので、適用を失念しないように留意してください。
5 超過物納の許可を受けるための手続き 相続税法第43条第5項には、「物納財産について過誤納額の還付を受けようとする者は、その過誤納額、還付を受けようとする財産の種類および価額その他の事項を記載した申請書を税務署長に提出しなければならない」旨規定されていますが、実務上、このような税務署所定の申請書があるわけではありません。 これは、超過物納について金銭還付を受けるためには、必ず納税地の所轄税務署長に対して、まずは物納の申請手続きを行い(相法41、42)、その手続きの中で他に適当な財産がない場合に限り、やむを得ず超過物納を行う旨の説明をし、物納の許可と同時に超過物納の許可を得る必要があるためです。その際に税務署によって超過物納による金銭還付額の計算が行われるために、超過物納を受けるための申請書は特に用意されていないというわけです。 |