4 増資の税務

−有利な発行価額には問題が−

 設立時の払込みについては、資金の出所以外に税務上特に気を付ける点はありませんが、設立後の増資については、税務上の問題がいろいろと発生します。ここでは増資の方法をまとめるとともに、税務上の問題点を説明します。なお増資する法人については資本等取引に該当するため課税問題は生じません。

 
【1】増資の方法
 
 増資の方法と税務上のポイントをまとめると次のようになります。
 
増資方法 会社の財産 株主の持株割合 税務上のポイント



金銭による出資及び現物出資 公募増資 増加する 変動する 時価>発行価額となる有利発行の場合に注意(【3】参照)
第三者割当増資
株主割当増資 変動しない 失権株が発生した場合に注意(【3】参照)



法定準備金の資本組入れ 資本準備金の資本組入れ 増加しない
利益準備金の資本組入れ みなし配当課税の対象となる(【2】参照)
配当可能利益の資本組入れ


転換社債の転換請求 変動する 社債発行時の株式の時価>転換価額又は行使価額となる有利発行の場合に注意(【4】参照)
新株引受権付社債の新株引受権の行使 増加する
* 有限会社は、無償増資と公募増資はできません。ただし、有限会社においても、いったん利益の配当を行い、その配当を原資として出資工数に応じて増資払込みをすれば、無償増資と同様の結果を得ることができます。

 
【2】無償増資の課税問題
 
 株式会社において、利益準備金及び配当可能利益の資本組入れが行われると、配当があったものとみなされて、所得税が課されます。(所法25(2))
 
*1 みなし配当の場合、発行人は20%の所得税を源泉徴収する必要があります。
2 みなし配当を受けた株主は、有価証券の取得価額の改訂計算が必要です。
3 みなし配当は法人税法上、受取配当等の益金不算入の対象となります。

 
【3】有償増資の課税問題
 
 有償増資の場合、株式を時価で発行する場合や株主に平等に割当てがなされる場合には、特に税務上問題となることはありませんが、次のように有利な価額で増資が行われ、株主間で価値の移転があった場合には、課税問題が生じますので注意が必要です。
 
有償増資の方法 発行の態様 株式を引き受けた個人 株式を引き受けた法人
同族会社の既存株主の親族 その他









株主割当増資


新株の引受けをしない株主がいてその失権株を他の者が引き受けた
(A) 贈与税
(所得税)
*
所得税 * 法人税
受贈益課税
新株の引受けをしない株主がいてその失権株を誰にも割り当てなかった
(B) 贈与税
第三者割当増資
(縁故募集含む)
有利発行
(C) 贈与税
(所得税)
*
所得税 * 法人税
受贈益課税
* 一時所得や給与所得又は退職所得として所得税の課税対象となります。


[解説] (相基通9-4、9-7)
(A)のケース 失権株を引き受けた人 新株を引き受けなかった株主
(B)のケース 実際の引受割合が増資割合を超えた人 実際の引受割合が増資割合未満の人
(C)のケース 新株を引き受けた親族等 新株を割り当てられなかった株主
* 親族等とは、親族及び内縁者、使用人など(これらの者の親族で生計を一にするものを含みます。)をいいます。
 
 アドバイス
有利な発行価額により新株が発行される場合、特に同族会社において親族間で価値の移転がある場合には贈与税の問題が生じるので注意してください。

 
【4】転換社債・新株引受権付社債の有利発行
 
 【3】有償増資の課税問題と同様に、転換社債の転換価額又は新株引受権付社債の新株引受権の行使価額が、合理的に定められていない場合には、いわゆる有利発行に該当し課税上の問題が発生します。(所基通48−6、48−6の2、法基通6−1−3、6−1−3の2)

 

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