2 資本金の額と現物出資の税務

−資本金は最低資本金をクリアすればいくらでもよい?−

 会社をつくるときには、資本金の額を決めなければなりません。商法及び有限会社法により、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円という最低資本金を満たさなければ会社を設立できません。(商法168ノ4、有限会社法9)

 ここでは、資本金の大小で納税額に影響の出る項目のうち特に影響の大きい、交際費の定額控除限度額の計算、中小法人に対する種々の特典について検討します。また、多角化戦略で分社化する場合に税務上メリットのある特定現物出資について説明します。


【1】資本金1,000万円以下、1億円以下の会社の特典

 法人税では、会社の期末資本金額の大きさにより交際費の損金算入できる金額が異なったり、法人住民税の均等割税額にも差が出たりしますので、取引関係上などで特に資本金を大きくする必要のない株式会社については、資本金を最低資本金の1,000万円(有限会社なら300万円から1,000万円まで)にするとよいでしょう。

 また、資本金1億円以下の中小企業者にはさまざまな税の特典が設けられていますので、交際費の定額控除限度額を気にせず資本金を増やそうという場合でも、これらのメリットを享受するために資本金は1億円までの間にするとよいでしょう。

<法人税における交際費の定額控除限度額>
期末資本金額 交際費の定額控除限度額
 1,000万円以下 年400万円
 1,000万円超5,000万円以下 年300万円
 5,000万円超
* 定額控除限度額以下の部分についてもその20%は損金に算入されません。

<法人住民税の均等割税額>
資本金

資本準備金
道府県民税の
標準均等割税額
市長村民税の標準均等割税額
従業者数
50人以下
従業者数
50人超
1,000万円以下 年額2万円 年額5万円 年額12万円
1,000万円超1億円以下 年額5万円 年額13万円 年額15万円
1億円超10億円以下 年額13万円 年額16万円 年額40万円

<資本金1億円以下の会社に認められる法人税の特典>
軽減税率の適用 年800万円以下の所得について軽減税率(30%が22%に)が適用されます。
機械等を取得した場合 1台230万円以上の新品の機械装置等を取得して事業の用に供した場合、特別償却や税額控除が可能です。
貸倒引当金の特例 貸倒引当金の計算の際、実績繰入率に代えて従来通りの法定繰入率が使用できますし、平成13年3月31日までの開始事業年度は16%増しが可能です。
その他 試験研究費の税額控除や電子機器利用設備を取得した場合の特別償却又は税額控除などの特典があります。

 アドバイス
 会社を設立すると、設立初年度及び2年度は、消費税の基準期間がないため消費税の免税業者となりますが、資本金を1,000万円以上にすると、設立初年度及び2年度とも消費税の納税義務者となるため注意が必要です。
 資本金が1億円以上になると原則として法人税の税務調査は国税局の調査部が担当することになります。


 MEMO
 他に資本金の大小で納税額に影響の出る項目は次のとおりです。
(1) 同族会社の留保金課税……… 留保控除額の積立金基準
(2) 寄付金の損金算入限度額…… 一般の寄付金・特定公益増進法人に対する限度額の計算
(3) 設立登記の登録免許税……… 株式会社・有限会社とも資本金の7/1000
(ただし、株式会社は最低15万円、有限会社は最低6万円)


【2】特定現物出資による有価証券の圧縮記帳

 通常、会社を設立する場合には現金で資本金を払い込むのですが、現金に代えて土地・建物・機械等の財産の現物で出資する方法を現物出資といいます。現物出資は現物財産をいったん時価で売却しその代金で出資したとみなし現物財産の含み益に対して課税されるのが原則ですが、一定の要件を満たせば、有価証券(子会社株式)を圧縮記帳することにより課税を繰り延べることができます。(法法51)

1.圧縮記帳の要件

 現物出資した場合に圧縮記帳が認められる要件は次のとおりです。(法法51、法令93)


 
 
(1) 出資時における持株割合又は出資割合が95%以上であること(出資時においてその後持株割合等が95%未満になることが見込まれているものは除く。)
(2) 内国法人の株式・国内にある不動産や事業所の資産等(持株割合が25%以上の外国法人の株式等を除く。)を現物出資し、外国法人を設立するものではないこと
(3) 現物出資者以外の出資者の1株当り払込金額が現物出資者に比べて著しく低くないこと
(4) 新設法人が譲り受けた各資産について現物出資直前の帳簿価額以下の金額を受入価額とすること

 現物出資と同様の効果をもたらす方法として、あらかじめ金銭により会社を設立しその後財産を譲渡する方法(財産引受け又は変態現物出資といいます。)がありますが、この場合にも一定の要件を満たす場合には圧縮記帳が認められます。(法基通10−7−1)


2.圧縮限度額(法令94)

圧縮限度額 出資により取得した株式等
の取得時の価額(時価)
出資資産の出資
直前の帳簿価額
出資に要し
た経費の額
* 圧縮額の損金算入は原則として確定申告書等に損金算入に関する明細の記載がある場合に適用されます。


 MEMO
 株式会社、有限会社ともに設立時に現物出資(財産引受けを含みます。)する場合、次の財産を除き裁判所が選任した検査役の検査が必要です。(商法173、有限会社法12ノ2)
 (1)  財産の価額の総額が資本の額の5分の1を超えず、かつ500万円を超えないとき
 (2)  取引所の相場がある有価証券で定款に定めた価額がその相場を超えないとき
 (3)  不動産で、不動産鑑定士の鑑定評価を受け、その不動産の価額が相当であることにつき弁護士の証明を受けたとき

   会社分割があった場合の消費税の納税義務の免除の特例

 法人を新たに設立した場合には、設立初年度及び2年度は消費税の基準期間の課税売上高はありませんが、現物出資により設立された会社(以下「子会社」といいます。)については、設立時における持株割合又は出資割合が95%以上で、親会社の事業の全部又は一部を子会社に引き継いでいる場合、免税業者又は簡易課税業者選択可能かどうかを判定する子会社の基準期間の課税売上高の計算は次のようになります。(消法12、37、消基通1−5−18)

(1) 設立初年度
親会社の基準期間の課税売上高が子会社の基準期間の課税売上高とされます。
(2) 設立2・3年目事業年度
子会社の基準期間の課税売上高 親会社における子会社の基準期間対応の課税売上高
* 上記の結果、課税売上高が3,000万円以下であったとしても、再度新設法人の規定により納税義務の有無を判定することになります。(消基通1−5−17)

 

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