5 減資と自己株式取得の税務
−自己株式消却で株主資本利益率の向上−
 
減 資とは、会社の資本金の額を減少させることです。

 減資は、営業の一部を譲渡したり、事業規模を縮小する等したため過剰資本となった会社が、会社財産を株主に返還する有償減資と、会社財産の払戻しはせず、単に帳簿上の資本金額を減少させることで欠損の填補をはかる無償減資に分けることができます。

 このうち、債務超過の状態にある会社の再建策としてよく使われるのは、無償減資と抱合わせで有償増資を行う方法です。

 また最近注目を浴びてきているものに、株主資本利益率(ROE)の向上を目的とした利益による自己株式消却があります。

 ここでは減資、株式の消却、自己株式の取得について説明するとともに税務上の取扱いについて考えてみます。

【1】 減資の方法

 額面株式のみを発行している会社の減資の方法をまとめると次のようになります。
 
資本の
減少
(減資)
額面金額
の減少
発行済株式数は減少しない 切捨て 払込金額の一部を株主の損失において切り捨てて減資する方法 無償
払戻し 払込金額の一部を株主に返還し減資する方法 有償
株式の併合 発行済株式数が減少する 発行済みの全株式について、例えば2株を1株に併合するという形で発行済株式数を減少させ減資する方法 無償
株式の消却 強制消却 例えば抽選等の方法により株主の意思とは関係なく特定の株式を取得し、その株式を消却して減資する方法 有償
無償
任意消却 株主の同意を得た上で、売買契約等に基づいて特定の株式を取得し、その株式を消却して減資する方法 有償
無償

商法上、減資については株主総会の特別決議と債権者保護手続が必要です。(商法375、376)

 
【2】 減資の税務

 減資会社及び減資会社の株主に対する税務上の取扱いは、減資差損が発生するのか、減資差益が発生するのかによって異なります。(法法2十七、法法24)

  減 資 会 社 減資会社の株主



減資差損が発生
(1) 減資差損は、資本等取引として取り扱われ、損金には算入されません。
(2) みなし配当にかかる源泉徴収が必要です。
(1) みなし配当課税されます。
ただし、法人株主は受取配当等の益金不算入制度、個人株主は配当控除が適用できます。
(2) 株式の取得価額の改訂計算が必要です。
  
減資差益が発生
 
(1) 減資差益は資本積立金として取り扱われ、益金には算入されません。
(2) 欠損金の繰越控除制度は、減資差益には何ら影響を受けません。
(1) 株式の取得価額の改訂計算が必要です。



減資差益が発生

 
【3】 自己株式の取得の方法

 商法は、資本充実の原則により自己株式の取得を原則として禁止していますが(商法210)、一定の場合、一定の要件の下に自己株式の取得を認めています。自己株式の取得が認められる場合をまとめると次のようになります。

項  目 商法の条文 内  容 主な条件 取得後の処分










資本の減少によるもの 210条1号 212条 【1】の減資の方法を参照してください。 株主総会特別決議 遅滞なく失効させる。
株主に配当すべき利益によるもの 定款の規定に基づくもの 原始定款又は総株主の同意による変更定款により、配当可能利益によって株式を消却するもの 配当可能利益内
定時株主総会の決議によるもの*2 212条ノ2 定時株主総会の決議により株式を買い受けて、配当可能利益によって株式を消却するもの 株主総会特別決議*1
配当可能利益内
合併・営業全部の譲受けによる取得 210条2号 被合併会社や譲渡会社が合併会社や譲受会社の株式を所有しており、合併・営業譲受けにより合併会社・譲受会社が取得する場合 相当の時期に処分するか、合併と同時に消却する。
会社の権利の実行による取得 210条3号 例えば会社の債権を保全するために、債務者が所有する自己の株式を代物弁済として取得する場合 相当の時期に処分する。






相続人からの買受けによる取得 210条ノ3 相続人たる株主が、相続によって取得した株式を相続開始後1年以内に会社に買取請求し、会社が買い取る場合 株主総会特別決議
発行済株式総数の20%以内
中間配当可能利益内
買受け人を自己と指定する場合の取得 210条5号
204条ノ2〜
204条ノ5
会社が株主より譲渡承認請求を受けた場合、その譲渡先を承認せず会社を譲渡先として指定し、買い取る場合
特定の株主総会決議に反対する株主よりの取得 210条4号 例えば合併承認株主総会において、合併に反対の株主が会社に株式買取請求をし、会社が買い取る場合
取締役又は使用人に譲渡する場合の取得 210条ノ2 正当な理由により、取締役又は使用人に譲渡するため、会社が株式を買い取る場合 株主総会特別決議*1
発行済株式総数の10%以内
配当可能利益内
取得後10年以内に取締役又は使用人に譲渡する。
*1  公開会社(上場会社及び店頭登録会社)は株主総会の普通決議で行うことができます。
*2  公開会社の特例(株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律)
 (1)  公開会社については、株主総会の特別決議をもって、取締役会の決議で自己株式を買取消却できる旨を定款に定めることができます。
 この場合の財源規制は、発行済株式総数の10%以内で、中間配当可能利益(中間配当後は中間配当額を控除した金額)の1/2以内とされます。
 (2)  上記の中間配当可能利益に代えて、資本準備金を財源とした株式消却が、一定の条件の下で平成12年3月31日までに限り可能となりました。
 この場合の財源規制は、資本準備金及び利益準備金の合計額のうち資本金の1/4を超える範囲内で、中間配当可能利益(中間配当後は中間配当額を控除した金額)以内とされます。

 
【4】 利益による株式消却の税務

1.発行元法人
 
 利益による株式の消却は、取得後直ちに失効手続を行うものであるため、課税上は資本等取引として取り扱われます。したがって自己株式消却損は損金に算入されません。
 

2.株主

 利益による株式の消却の場合には消却された株主のみならず消却されなかった株主に対しても税務上の問題が生じてきます。

区  分 法人株主 個人株主






非公開株式
みなし配当、株式売却損益(みなし配当以外の部分)の対象となります。
みなし配当については、所得税の源泉徴収が適用されます。
みなし配当については、受取配当等の益金不算入の対象となります。
みなし配当、株式譲渡益(みなし配当以外の部分)の対象となります。
みなし配当については、所得税の源泉徴収が適用されます。
みなし配当については、配当控除の対象となります。



公開買付け 同上(注1) 同上(注2)
市場買付け
みなし配当の対象とならずに、株式売却損益の対象となります。
(平6課法8−5)
みなし配当の対象とならずに、株式譲渡損益の対象となります。
(平6課法8−5)









非公開株式
みなし配当として課税されます。
発行元法人が株式会社の場合、所得税の源泉徴収はされません。(措法9の6)
みなし配当については、受取配当等の益金不算入の対象となります。
みなし配当として課税されます。
発行元法人が株式会社の場合、所得税の源泉徴収はされません。(措法9の6)
みなし配当については、配当控除の対象となります。
公開株式 同上(注3) 同上(注4)
(注1)  資本準備金による株式の消却の場合(平成12年3月31日まで)は、みなし配当課税の対象となりますが、所得税の源泉徴収はされません。(措法9の7)
 ただし、「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律」の平成10年度改正附則第3条の特例によるものは、みなし配当としての課税はありません。(同法附則第7条)
(注2)  平成7年11月17日から平成11年3月31日(以下「指定期間」といいます。)の間に消却が行われた場合には、みなし配当としての課税はありません。この場合、すべて株式譲渡損益の対象となります。(措法9の5)
 なお、資本準備金による株式の消却の場合(平成12年3月31日まで)も、みなし配当としての課税はありません。(措法9の7)
(注3)  指定期間内に消却が行われた場合には、みなし配当としての課税を受けるか受けないかを選択できます。(措法67の8)
 みなし配当としての課税を受けなかった場合には、株式の取得価額の改訂計算が不要のため、その株式を将来売却したときに売却損益の対象となります。
(注4)  指定期間内に消却が行われた場合、みなし配当としての課税はありません。(措法9の5)
 法人株主と同様、その株式を売却したときに譲渡損益の対象となります。


設   例

 ここでは簡単な設例を使って利益による株式の消却の税務を説明します。
 発行元法人(非公開会社)の税務上の資本の部は次のとおりで、その発行済株式数の2/3をA、1/3をBが所有していたとします。株主総会の特別決議で、B所有の全株式を700で購入し利益消却する場合を考えてみます。

 

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