目次 II-12


12 どこまでが交際費の範囲となるか(5)

接待用にクルーザーを購入した場合
 P社は、社長が沖釣りが好きということもあり、社長自らが、接待で得意先を釣りに連れていく機会が多くあります。
 今までは、釣りに行く度に、現地で船を借りていましたが、借りるよりもいっそ船を購入したほうが便利だということになり、当期に接待専用として中古のクルーザーを一隻購入しました。
 そして、当期に、その船に係る減価償却費を90万円計上しました。

調査官の指摘
 クルーザーは接待用として購入されたものであり、当然、クルーザーに係る減価償却費も交際費とすべきです。

会社の言い分
 確かにクルーザーは接待用ですが、仮に、接待を行わない月があっても、その月の減価償却費は交際費とされてしまい不合理です。



税務判断のポイント

 調査官の指摘は誤りで、クルーザーに係る減価償却費は交際費には該当しません。

 調査でこのような費用が問題となるケースは少ないのですが、交際費の性質を考えるうえでおもしろいので紹介しました。
 交際費とは、得意先に対する接待、供応等の行為のために支出するものをいうとされています。 本事例の場合、接待用のクルーザーの減価償却費は確かに費用ですが、接待、供応という行為のために具体的に支出したものではありませんから交際費には該当しません。

税理士のアドバイス

 いくら接待等のためといっても、減価償却費までは交際費に該当しないということを理解しておいてください。
 また、本事例の場合、クルーザーの通常の係留費用や維持管理費も減価償却費と同様、接待等の行為のために具体的に支出したものではありませんので交際費には該当しません。

【参考法令】  措法61の4(3)(交際費等の損金不算入)

 

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