目次 II-8


8 どこまでが交際費の範囲となるか(1)

得意先へのリベートを招待旅行費用として積み立てた場合
 J社は、従来、売上高の3%をリベート(売上割戻し)として得意先の口座へ振り込んでいました。
 しかし、得意先の営業担当者の要望もあり、当期から、算定方法はそのままですが、割戻金を当社において得意先別に預り金として積み立て、ある程度の額になった時点で、その預り金を原資として得意先を旅行に招待する方法に変更しました。
 当期は、そのリベートに係る当期積立額30万円を売上割戻しとして損金処理しています。なお、旅行は来期実施する予定です。

調査官の指摘
 当期に計上した売上割戻しの30万円は、旅行が当期に実施されておらず、当期の損金とは認められません。さらに、旅行を実施して損金とした期において、交際費として処理する必要があります。

会社の言い分
 営業政策上の理由で、支払方法を従来の現金で割戻す方法から、旅行積立てとする方法に変えただけであり、売上高の3%を割戻すという方法は変わっていません。
 また、積立金は、旅行目的にしか使用しないものの、各得意先ごとの積立額を把握しており、当社は、割戻金を預かっているにすぎません。



税務判断のポイント

 調査官の指摘どおり、旅行が実施された時点で旅行に要した額を交際費とすべきです。

 売上割戻しは、調査の際どのようなもので割戻しされているのかが問題となります。
 金銭による割戻しは、相手方の収益に計上されることもあり、損金処理が可能ですが、金銭に代えて、物品を交付する場合や本事例のように、旅行・観劇に招待する場合は、その費用は交際費に該当することになります。
 ただし、物品による割戻しの場合でも、その購入単価がおおむね3,000円以下のものや、事業用資産であれば交際費には該当しません。なお、ここでいう事業用資産とは、机やロッカー、ショーケースなどその用途が事業用として使用される場合が多いとされるものです。現実に相手先が事業用として使用しているか否かは判定の基準となりません。
 また、本事例のように割戻金を預り金等として積み立て、積立金が一定額に達した際にその積立金で得意先を旅行、観劇等に招待することとしている場合には、積み立てた事業年度の損金とはならず、旅行、観劇等に招待した事業年度の交際費となります。

税理士のアドバイス

 リベート(売上割戻し)を支出する際、交際費課税を避けたいならば、金銭で行い、金銭以外のもので割戻しを実施したいのであれば、購入単価が3,000円以下の物品や、事業用資産を交付するのが良いでしょう。

【参考法令】  措通61の4(1)−6(売上割戻し等の支払に代えてする旅行、観劇等の費用)
 措通61の4(1)−4(売上割戻し等と同一の基準により物品を交付し又は旅行、観劇等に招待する費用)

 

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