目次 I-4


4 どのようなものが資本的支出になるのか(2)

集中生産のために行った移設費用
 製造業であるF社は、2つの工場を有しています。製品は、従来、まずA工場で原材料の加工処理を行い、次にB工場で組立作業を行い、またA工場に戻して完成品として仕上げるという複雑な工程を経て製造されていました。
 今回、作業効率の向上を図るため生産ラインを合理化し、B工場の機械を移設し、A工場で集中生産を行うことにしました。
 F社では、B工場の機械をA工場に移設するために支出した費用(運賃、据付費など)500万円を修繕費として処理しています。
 なお、移設したB工場の機械の移設直前の帳簿価額は3,000万円でした。

調査官の指摘
 本事例のような集中生産のための移設費用は、修繕費とは認められず、移設した機械の取得原価に算入すべきです。

会社の言い分
 ただ、製造場所を変えただけであり、個々の機械自体の性能はなんら変わりがなく、修繕費に該当します。



税務判断のポイント

 調査官の指摘どおり、資本的支出に該当します。

 一般的には、機械装置の移設費は、その機械装置自体の効用を高めるものではなく、修繕費としての処理が認められています。
 しかし、その移設が、本事例のように集中生産を行うためとか、より良い立地条件において生産を行うために、ある工場の機械装置を他の工場に移設した場合などにおいては、運賃、据付費などその移設に要した費用(解体費を除きます。)は、修繕費としては認められず、移設した機械の取得原価に含めなければならないとされています。
 これは、移設によって、機械等をより効率的に動かすことを期待して支出される費用であるとされるためです。
 また、この場合に、移設した機械の帳簿価額の中に、当初この機械を設置した際に支出した据付費(旧据付費とします。)が含まれている場合には、帳簿価額のうち旧据付費に対応する部分の金額については損金算入が認められています。なお、移設費の額が、その機械の移設直前の帳簿価額の10%相当額以下である場合には、逆に、旧据付費の部分はそのままにしておき、移設費の額を損金とする処理も認められています。

税理士のアドバイス

 機械を移設した場合、原則として、修繕費処理が認められますが、本事例のように集中生産を行うような目的での移設費用は修繕費として認められないことを理解しておいてください。
 なお、本事例とよく似たケースとして、新規の生産設備を導入することに伴い従来ある生産設備の配置換えを行う場合があります。この場合の移設費用は、通常の移設として移設費の損金算入が認められています。

【参考法令】  法基通7−3−12(集中生産を行う等のための機械装置の移設費)
 法基通7−8−2(2)(修繕費に含まれる費用)

 

目次 次ページ