イ |
相続財産の評価に当たっては、別段の定めのある場合を除き、財産評価基本通達の定めにより評価することが原則であるが、当該財産評価基本通達によらないことが相当と認められるような特別の事情のある場合には、他の合理的な時価の評価方式により評価することが認められるものと解すべきである。
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ロ |
本件事案の場合においては、被相続人(実際には、実務の大部分を相続人が代行)が相 続開始直前に借り入れた資金で不動産を購入し、相続開始直後に当該不動産が相続人により売却(当時の市場価額で第三者に譲渡)され、当該売却代金によってその借入金が返済されているような、当該不動産と借入金との対応関係が明確なものにまで画一的に財産評価基本通達に基づいて評価することが当該不動産を客観的な市場における不動産の交換価値によって評価したときの比較において、実質的な租税負担の公平を著しく損なうもので容認し難いものであると考えられ、このような事態がイに掲げる「特別の事情のある場合」に該当するものと解されるものである。
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ハ |
納税者側においては、「本件取扱い(当該不動産を取得価額により評価すること)が措置法改正によって新設された特例(旧措置法第69条の4)をその適用時限以前の相続事案に対しても適用するのと結果的に同じ効果を生じさせるものであり容認することはできない」と主張するが、本件事案は、相続により取得した財産の評価について、ロに掲げるような特別の事情が在することにより、財産評価基本通達の定めによらず、他の合理的と認められる時価の評価方式により評価したに過ぎず、財産評価の基本原則である相続税法第22条(時価による評価)の解釈の範囲内であり、納税者側の主張するような租税法律主義、遡及処罰の禁止及び平等原則に反するような事態を招来しているとは到底解し得ないものである。 |