II-4 |
2 私法と税法との関係 |
4 私法上の法律構成による否認 |
1 「私法上の法律構成による否認」の意義 「私法上の法律構成による否認」とは、課税要件事実の認定を当事者間が採用した外観や形式にとらわれず、当事者が真に意図しているであろう私法上の事実関係を前提として法律構成し、課税要件の当てはめを行うことによって租税回避行為に対する否認を行う手法を指します。 租税回避行為を否認する手法には、法人税法132条の同族会社の行為計算否認、同法132条の2の組織再編に係る行為計算否認などの「包括的否認規定」、過大役員報酬等の損金不算入(法法34)などの「個別的否認規定」のほか、「実質主義による否認」、本項で説明する「私法上の法律構成による否認」などが考えられます。 「実質主義による否認」と「私法上の法律構成による否認」とは、当事者が用いた法形式を否認して課税要件の当てはめを行う点で共通します。しかし、前者が真実に存する法律関係から離れて、その目的に即して課税要件事実の認定を行うのに対し、後者は真実に存する法律関係に即して課税要件事実の認定を行う点が異なります。 2 租税負担軽減の意図・動機と納税者の真意 「私法上の法律構成による否認」が無制限に認められてしまうと、具体的な法律上の根拠なくして租税回避行為を否認することができます。したがって、納税者に課税についての予測可能性を失わせるものとして租税法律主義の観点からは限定的に適用がなされるべきと考えられます。 「私法上の法律構成による否認」の適用要件は下記のとおりです。
課税庁が勝訴した判決においては、納税者の租税回避の意図・動機が、当該契約が真実の法律関係でないことの有力な根拠として重視されています。納税者の租税回避の意図・動機は、要件事実論では間接事実に属するもので、主要事実以外の事実であっても税務訴訟では重視されることを示す一例と評価できます。 |