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6 主張・立証責任の分配 |
1 主張責任、立証責任とは 裁判では、原告がその訴えについて事実関係の主張を行い(これを「事実上の主張」といいます。)、これに法律関係を当てはめる主張を行います(これを「法律上の主張」といいます。)。そして、原告はこの事実関係の主張を根拠付けるための証拠の申し出を行うことになります。これらを「攻撃方法」といいます。これに対し、被告は原告の主張を排斥するために、事実上の主張及びこれを根拠付けるための証拠の申し出を行うことになります。これらを「防御方法」といいます。 また、当事者が自己に有利な要件事実を立証できなかった場合、その事実は存在しないという取扱いを受けることを「立証責任を負っている」といいます。 裁判においては弁論主義の下、原告・被告が攻撃方法・防御方法を尽くして資料を提出し、判決の基礎となるべく戦うことになるわけです。 裁判では、一定の事実関係に対して法律を適用するのですが、事実関係が証明されなかった場合であっても判決を下さないわけにはいきません。また、いったん確定した判決は「既判力」といって、それ以降の法律関係を拘束することになりますので、いい加減な判決を下すことは当然許されません。 原告・被告の間において争いのある主要事実について真偽が不明なことがよくあります。これを専門用語では「真偽不明」あるいは「ノンリケット」などといいますが、このような場合には訴訟上どのように取り扱うのでしょうか。事実関係が証明されないときであっても、主張・立証すべき主要事実を主張・立証しなかったことで当事者のいずれか一方が不利益を被ることになるという一定の価値判断の下、判決を下していくことになるのです。この一定の価値判断を「主張・立証責任の分配の法則」といいます。主張すべき主要事実を主張しなかったことで不利益を被ることを「主張責任を負っている」といいます。 2 法律要件分類説における主張・立証責任の分配 主張・立証責任の分配についての通説的見解である法律要件分類説においては、各当事者は自己に有利な法律効果の発生を求める法規の法律要件について主張・立証責任を負うとされています。 具体的には、主張・立証責任は次のように分配されます。
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