III 非居住者の確定申告

 非居住者に該当する人が日本国内で得た所得(「国内源泉所得」)について確定申告をする場合、あるいは年の途中で居住者が非居住者になったり、非居住者が居住者になったりした場合については、一般の居住者と異なる申告が必要になります。

1 所得金額と税額の計算
 
 非居住者の各種所得の計算方法、税額の計算等については「居住者」に準じて行います。ただし、所得控除については、雑損控除(国内にある資産について生じた損失に限ります。)、寄付金控除及び基礎控除が適用できるだけで、他の控除は適用できません。
 なお、非居住者についても、利子所得、配当所得及び株式等に係る譲渡所得等について源泉分離課税又は源泉分離選択課税が認められています。
 また、土地等、建物等の譲渡所得の分離課税及び割引債の償還差益の分離課税の適用も認められています。

2 申告、納付及び還付
 
 原則として居住者に準じ、翌年2月16日から3月15日まで(平成9年分については平成10年2月16日から3月16日まで)の間に確定申告及び納税を行います。

3 納税管理人の選任と納税地
 
 国内に住所又は居所を有しない非居住者で、申告納税をしなければならない人は、その事務処理のために納税管理人を選任して、自分の納税地の所轄税務署長に届け出なければなりません。
 届け出がされると、税務署長は納税管理人の住所又は居所に書類の送達を行いますが、申告書等の提出先は、納税管理人の納税地でなく、非居住者本人の納税地の所轄税務署長です。

4 年の中途で出国あるいは帰国した場合の確定申告
 
 以上のように、非居住者と居住者とでは確定申告の対象となる所得が異なりますが、年の中途で出国(あるいは帰国)した場合、つまり1年間に「居住者期間」と「非居住者期間」の両方がある場合の確定申告は次のようになります。

(i) 年の中途で居住者が非居住者となった場合

   

納税管理人を選任した場合…… AとBの合計を翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告します。
納税管理人を選任しない場合… 出国の時までにAについて確定申告します。さらに翌年2月16日から3月15日までの間にAとBの合計を確定申告します。その際には、出国の時までにした確定申告に係る納税額は予納税額として納付すべき所得税の額から控除します。
 

確定申告に際して適用する諸控除

 医療費、社会保険料、小規模企業共済等掛金、生命保険料又は損害保険料の各控除の額は居住者期間に支払ったこれらの金額を基として計算します。
 配偶者、扶養、障害者、老年者、寡婦(夫)又は勤労学生の各控除の額は、次の区分に応じて判定したところで計算します。
(イ)  納税管理人を選任した場合……その年12月31日(その年中に死亡した時は、その死亡の時)の現況
(ロ)  納税管理人を選任しない場合……居住者でないこととなる時の現況
 雑損控除については、居住者期間及び非居住者期間に生じた損失の金額や所得金額を通算してその年分の控除額を計算します。(損失は国内にある資産に係るものに限ります。)
 外国税額控除については、非居住者期間内に生じた所得はないものとして計算します。
 

(ii) 年の中途で非居住者が居住者となった場合

   

 BとAの合計を翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告します。

確定申告に際して適用する諸控除

 医療費、社会保険料、小規模企業共済等掛金、生命保険料又は損害保険料の各控除の額は居住者期間に支払ったこれらの金額を基として計算します。
 配偶者、扶養、障害者、老年者、寡婦(夫)又は勤労学生の各控除の額は、その年12月31日(その年中に死亡した時は、その死亡の時)の現況により判定したところで計算します。
 雑損控除については、居住者期間及び非居住者期間に生じた損失の金額や所得金額を通算してその年分の控除額を計算します。(損失は国内にある資産に係るものに限ります。)
 外国税額控除については、非居住者期間内に生じた所得はないものとして計算します。


5 年を通じて非居住者である場合
 
 総合課税を受ける国内源泉所得の金額(B)が基礎控除額を超えることとなる場合は翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があります。
 (B)が基礎控除額以下の場合でも、源泉徴収された税額の還付を受けるために確定申告をすることができます。
 この場合の申告に当たり適用される諸控除は前記一の1のとおり、基礎控除、雑損控除及び寄付金控除だけです。

 

6 退職所得に対する課税方法
 
 非居住者が退職金を支給された場合で、総支給額のうち居住者であった期間に係る勤務期間等に対応する部分は、国内源泉所得として日本で課税されます。
 居住者が受ける退職金については、退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1が退職所得となり分離課税(累進税率)されますが、非居住者の場合はこの課税方法は適用されず、支払額のうちの国内源泉所得部分について一律20%の源泉徴収がされます。
 したがって、長年居住者として勤務していた者が、たまたま退職金の支払を非居住者であった時に受けた場合と、居住者として退職金を受けた場合とで多額の税負担の差が生じることもあります。
 この問題を考慮して、「退職所得の選択課税」という特殊な課税方法が定められています。
 退職所得の選択課税とは、退職金の支払の基因となった「退職」によってその年中に支払を受ける退職金の総額(注1)を居住者として支払を受けたとして計算し(注2)、その税額が、源泉徴収された税額よりも少額の場合に、その差額の還付を受けることができるというものです。
(注1) ここでいう退職金の総額は国内源泉所得部分だけではありません。
(注2) 税額の計算に当たって、所得控除は基礎控除を含め一切適用しません。

 選択課税は、その適用を受けた方が常に有利とはいえません。例えば、居住者としての勤続期間が比較的短期間である場合には選択課税を受けない方が有利な場合もあります。
 
(例) 退職金の支払額 2,000万円
勤続期間 20年
 内居住者としての勤続期間  2年
    源泉徴収税額  2,000万円×2年/20年=200万円(国内源泉所得)
200万円×20%=40万円
選択課税を受けるとして計算した額
2,000万円−800万円(退職所得控除額)=1,200万円
1,200万円÷2=600万円
税額 87万円
(源泉徴収税額40万<87万円のため、選択課税を受けない方が有利)


7 源泉徴収を受けない給与等の申告納税
 
 国内源泉所得(所得税法161条八号イ又はハに掲げる給与等(国内において行う勤務に基因する給与等))であっても、それが国外で支払われる場合には源泉徴収の適用がありません。この場合には、その年の翌年3月15日までに、源泉徴収されない給与等について20%の税率による所得税を申告により納税しなければなりません。
 この場合は、「平成9年分所得税準確定申告書(所得税法第172条第1項に規定する申告書)」を使用します。

 

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