目次 IV-5


5 相続税額の取得費加算も3年経つと使えない

(1) 制度の概要

 相続又は遺贈により財産を取得した人が、その相続等により取得した財産のうち譲渡所得の基因となるものをその相続に係る相続税の申告書の提出期限から3年以内に譲渡した場合、その譲渡した資産の取得費に、次のそれぞれの算式の(1)と(2)の金額のうちいずれか低い金額を加算することができます。

《土地等以外の財産を譲渡した場合》
(1)
 譲渡した
 者の確定 ×
 相続税額
  譲渡した資産の課税価格の計
算の基礎に算入された価額
譲渡者の相続税の課税価格
(債務控除前)
(2)  譲渡資産の収入金額 −(譲渡資産の取得費+譲渡費用)

《土地等を譲渡した場合》


(1)


 譲渡した
 者の確定 ×
 相続税額
  譲渡者が相続等によ
り取得した土地等の
課税価格の計算の基
礎に算入された価額


 −


他の土地等の譲
渡についてすで
に取得費に加算
された金額
譲渡者の相続税の課税価格
(債務控除前)
(2)  譲渡資産の収入金額−(譲渡資産の取得費+譲渡費用)
(注1)  「確定相続税額」は、その資産を譲渡した日の属する年分の所得税の納税義務の成立する時において確定している相続税額によりますが、相続税額を計算する上で贈与税額控除が行われている場合には、贈与税額控除がなかったものとし、相次相続控除が行われている場合には、その相次相続控除相当額を加算して計算した金額によります。
 また、相続税額が、その後更正等により異動した場合にはその異動後の額によります。
(注2)  「譲渡者の相続税の課税価格」は、債務控除前の金額とし、相続開始前3年以内の贈与財産がある場合は、その額を加算した金額によります。
(注3)  「相続等により取得した土地等」には相続開始前3年以内に贈与により取得した土地等が含まれますが、相続税法第41条第1項の許可を受けて物納した土地等及び物納申請中の土地等や相続開始時において棚卸資産又は雑所得の基因となる土地等は除かれます。


(2) 未分割の場合のデメリット

 遺産分割がスムースに行われなかった場合には、譲渡所得税の計算において、相続税額の取得費加算の特例を活用することのできる期限が経過してしまい、譲渡税軽減の適用が受けられなくなる場合があります。

 

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