目次 IV-1


IV.遺産分割が相続税の申告期限までに調わなかった場合のデメリット


1 配偶者の税額軽減の適用がない

(1) 配偶者の税額軽減制度とは

 配偶者に対する相続税については、同一世代間の財産移転であり、遠からず次の相続が起こり、その際、相続税が課税されること、また、長年共同生活を営んできた配偶者に対する配慮、被相続人の死亡後における生存配偶者の老後の生活の保障、さらには遺産の維持形成に対する配偶者の貢献の考慮などということから、軽減措置が講じられており、次の算式で求めた金額が配偶者の税額から控除されます。


相続税の総額 ×
課税価格の合計額のうち(1)と
(2)のいずれか少ない方の金額

  = 配偶者の税額軽減額
課税価格の合計額
(1)  配偶者の法定相続分相当額
  (16,000万円に満たない場合には16,000万円)
(2)  配偶者の実際の取得額
(注)  (1)の「配偶者の法定相続分」は、相続の放棄があった場合は、その放棄がなかったものとした場合における法定相続分をいいます。

 この計算式によれば配偶者の相続財産が課税価格の合計額に対して法定相続分以下である場合、又は配偶者の相続財産が16,000万円以下である場合には、配偶者の納付税額はゼロとなります。

 配偶者の税額軽減の適用を受けるには、原則として相続税の申告書にその適用を受ける旨及びその計算に関する明細を記載し、一定の書類を添付して申告する必要があります。なお、税額軽減の適用を受けた結果、納付すべき税額がゼロとなる場合であっても、申告しなければなりません。

 なお、相続財産の全部又は一部を仮装し、又は隠蔽した場合には、その財産については、配偶者の税額軽減の規定の適用を受けることができません。


(2) 未分割の場合のデメリット

 上記算式の配偶者の実際取得額には相続税の申告書の提出期限までに分割されていない財産は含まれません。しかし、遺産の全部についての分割が終わっていなくても、分割の確定したものがあれば、その確定した財産については税額軽減の措置を受けることができます。

 したがって、配偶者の税額軽減額は、配偶者の取得すべきことが確定した遺産の額が16,000万円以上又は全遺産額の法定相続分以上のときには、確定することになります。

 なお、申告期限までに遺産が未分割であったことなどの事由により、配偶者の税額軽減の特例の適用を受けられなかった場合においても、原則として相続税の申告期限から3年以内に分割が調った場合は、更正の請求などの手続によって配偶者の納付すべき相続税額が減額されます。

 

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