目次 II-1


II.相続税の申告等に当たっての留意点


1 相続税の申告期限に間に合わない場合の応急措置

 相続税の申告書は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。しかし、相続人の認知・排除等相続人に異動が生じたこと、遺留分による減殺請求があったこと、遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があったことや死亡退職金等の支給が確定した場合等で、その事由が生じた日後1か月以内に申告期限が到来するときは、2か月の範囲内で申告期限の延長を申請することができます。また、胎児がある場合で、その胎児が生れた場合は、すべての相続人等について申告義務がなくなるときは、その胎児が生まれた日後2か月の範囲内で申告期限の延長を申請することができます。

 相続税の申告書は、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者等で、その申告書を提出すべきものが2人以上ある場合において、その申告書の提出先の税務署長が同一であるときは、これらの者はその申告書を共同で提出することができます。

 しかし、申告期限を過ぎてから申告書を提出した場合には、無申告加算税として、調査や更正又は決定があるべきことを予知して提出されたものでない場合でも、納付すべき税額に5%の割合を乗じて計算した金額が課せられます。さらに、法定納期限の翌日からその税金を完納する日までの期間の日数に応じ、延滞税も必要となります。

 延滞税の額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じ、次により計算した金額の合計額((1)+(2))となります。

(1)  納付すべき本税の額に納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、4.3%の割合で計算した金額(注)

(2)  納期限の翌日から2月を経過する日までに完納していない場合は、納付すべき本税の額に納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後について年14.6%の割合で計算した金額

(注)  納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間の延滞税の割合は、原則として年7.3%の割合が適用されます。ただし、平成12年1月1日以後の延滞税の割合(7.3%部分)については、年「7.3%」と「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」のいずれか低い割合を適用することとなります。
※ 平成21年11月30日における基準割引率は「0.3%」です。

 なお、平成19年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について、調査があったことにより決定があるべきことを予知して提出されたものでない期限後申告書に係る無申告加算税について、その申告書が法定申告期限から2週間以内に提出され、かつ、その申告書に係る納付すべき税額の全額が法定納期限までに納付されている等の期限内申告書を提出する意思があったと認められる一定の場合には、無申告加算税を課さないことになりました。一方、無申告加算税の割合について、納付すべき税額が50万円を超える部分に対する割合は20%です。

 さらに、延納や物納の申請期限にも間に合わなくなります。

 そこで、仮に遺産分割でもめていたり、遺産の調査が不十分ですべてを期限内に把握できない場合であっても、相続税の申告書の提出が遅れると無申告加算税や延滞税などの不必要な費用が発生しますので、もめている場合はいったん休戦し、遺産の調査が不十分な場合には、解明できている財産だけで期限内に申告するようにします。その際、延納申請等も併せて行います。その後、できるだけ早い時期に分割協議を調え、遺産の調査を済ませて修正申告等を行うようにします。

 修正申告書を提出した場合、原則として過少申告加算税が課されますが、調査や更正を予知しないでした修正申告の場合には課されないことになっています。

 しかし、相続人同士がもめている場合で、いったん休戦して期限内申告書を提出することが困難なときは、相続人の共同提出をあきらめ、相続人各人別に相続税の申告書を提出すればその相続人については無申告加算税等の課税を回避できます。

 申告期限に遅れて無申告加算税や延滞税を課されないよう最大限の努力をしたいものです。

 また、「相続税額の取得費加算の特例」の適用においても不利な取扱いを受けることもあるので、注意が必要です。

 

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