目次 I-1


I.根抵当権等の引継ぎ変更手続


1 根抵当権の設定登記の変更手続

 根抵当権の債務者兼担保提供者が死亡し、債務者としての地位を根抵当権者(銀行)と相続人との合意により特定の相続人が承継することとなった場合、相続開始の日から6か月以内に登記することが要件となり、これをしないときは、根抵当権の担保すべき元本が相続開始のときに確定します。

 なお、この期間内に合意がされない場合や合意はされたが当該登記がされなかった場合にも被担保債権は相続開始の時に遡って確定したものとみなされてしまいます。

 したがって、相続による変更手続が遅れて、元本が確定してしまうと根抵当権は抵当権に近い性格のものになり、相続後に発生する債務はその根抵当権では担保されません。つまり、事業継続上、新たに資金が必要な場合には、改めて根抵当権を設定しなければなりません。

 根抵当権を存続させるために必要な登記は、相続に係る所有権移転登記、債務者変更登記及び合意登記であり、当該登記に係る費用は新たに根抵当権を設定する登記と比べると比較的少額で済むことになります。

 相続人は銀行等と根抵当取引を継続するためには、次の手続を相続開始後6か月以内に行わなければなりません。

(1)  所有権移転の登記
 遺産分割協議の成立に時間を要する場合には、いったん共同相続として相続人全員の共有として登記し、後日分割協議が成立したとき、その者に変更するようにします。

(2)  被担保債務の承継

(3)  相続による債務者の変更の登記(なお、この登記申請は根抵当権者と設定者との共同申請で行いますので、相続証明書の添付は必要ありません。)

(4)  合意の登記
 根抵当権は相続人が担保物件を共同相続した場合、共同相続人全員との間で債務者を定める合意(契約)をし、その旨の登記をします。

 

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