目次 II−4


4 遺留分

1.遺留分の意義と性質

 「遺留分」とは、法律上、一定の相続人が取得することを保障されている相続財産の一定の割合であって、被相続人の処分に制限が加えられているものをいう。遺留分は、これを侵害する行為(被相続人による遺贈・贈与)がされた場合に、遺留分権利者による減殺請求権の行使によって回復が図られる。

 この遺留分減殺請求権の法的性質は形成権であり、減殺請求の時点で遺留分を侵害する行為の効力が消滅し、遺贈・贈与の目的物が物権的に遺留分権者に帰属すると解されている(最判昭和35年7月19日民集14巻9号1,779頁、最判昭和41年7月14日民集20巻6号1,183頁、最判昭和51年8月30日民集33巻5号562頁)。さらに、遺留分減殺請求によって取り戻した財産は、減殺請求権者の固有の財産となり、仮に減殺請求の相手方が他の共同相続人であってその者の持分が残る場合であっても、遺産分割の対象とはならない(当該他の共同相続人との遺産共有には戻らず、物権共有となる)とするのが裁判実務である(最判平成8年1月26民集50巻1号132頁)。

 しかしながら登記実務においては、相続登記または遺贈の登記をした後に目的不動産につき遺留分減殺があった場合には、遺留分減殺請求が相手方に到達した日を原因日付として、登記名義人と減殺請求権者との共同申請により、「遺留分減殺」を登記原因とする所有権(一部)移転登記をすべきとしつつも、相続登記または遺贈の登記をする前に遺留分減殺請求があった場合には、直接遺留分権利者に対する相続登記をすることが認められており(昭和30年5月23日民甲第973号)、必ずしも判例理論は徹底されていない。


2.遺留分権利者と遺留分の割合

 遺留分権利者の範囲とその割合(総体的遺留分)は、次表のとおりである(民1028)。遺留分権利者が複数あるとき、代襲相続人があるときの各人の遺留分(個別的遺留分)は、法定相続分の割合により決定される(民1044による887マル数字2マル数字3、900、901の準用)。

相続人中に配偶者がある場合 被相続人の財産の2分の1
ただし兄弟姉妹には個別的遺留分なし
相続人中に配偶者がない場合 子のみ 被相続人の財産の2分の1
直系尊属のみ 被相続人の財産の3分の1
兄弟姉妹のみ 遺留分なし

*包括受遺者は遺留分を有しない。

 

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