目次 II-2


2 相続税における贈与の取扱い

 贈与税は相続税の補完税としての位置づけから贈与したときだけではなく、相続開始時にも次のような特別な取扱いがあります。

 この特例は生前贈与加算といわれるもので、相続又は遺贈により財産を取得した人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合、その贈与財産を相続税の課税価格の中に含めて相続税の税額計算を行います。

 ただし、課税価格に含まれる贈与財産の相続税評価額は贈与を受けたときの評価額になります。また、相続開始前3年以内に贈与を受けていても、相続発生時にその被相続人から相続又は遺贈により財産を取得していない人については、贈与税の課税のみで完結します。


《特定贈与財産がある場合》
 被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産でも、贈与税の配偶者控除の適用を受けた金額に相当する部分又は相続のあった年に贈与を受けた財産(贈与税の配偶者控除の対象となる財産に限ります。)で贈与税の課税価格に算入する旨を相続税の申告書に記載したものについては、相続税の課税価格に加算する必要はありません。

《贈与と税務上の時効》


(1) 民法上の贈与とは

 贈与税の課税対象とされる贈与には、(1)民法上の贈与(非課税とされるものを除く。)と、(2)相続税法上の独自の観点から設けられたみなし贈与(例えば、生命保険金の贈与等)の2種類があります。

 民法上の贈与については、民法第549条において「贈与は当事者の一方が自己の財産を無償にて相手方に与うる意思を表示し相手方が受託を為すによりてその効力を生ず」と規定されています。

 このことから、贈与者による贈与の意思表示と受贈者による受贈の意思表示をもって成立する契約(諾成契約)行為であることが特徴であり、贈与者による一方的な意思表示のみでは民法上の贈与は成立しないことになります。


(2) 税務上の時効とは

 国税における時効期間としての定めは、国税通則法及び地方税法において、原則として法定納期限から5年間行使しないことによって、時効により消滅することとしています。そのため、納税義務は、原則として法定納期限から5年を経過すれば、時効によって消滅することとなります。ただし、偽りその他不正の行為によって免れ又は還付を受けた租税については、その時効は、原則として法定納期限から2年間は進行しませんから、この場合の時効期間は、実質的には7年間となります。

 偽りその他不正の行為とは、「真実の所得を隠蔽し、それが課税の対象となることを回避するため、所得金額をことさらに過小に記載した内容虚偽の確定申告書を提出する行為」と最高裁で判示し、単に確定申告書を提出しなかったという消極的な行為だけではこれに当たらないとしています。

 国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないため、時効完成後の納税は過誤納として還付されます。なお、時効完成の効力は起算日まで遡りますから、以降の利子税、延滞税も同様に消滅します。


(3) 名義預金の時効について

 民法上の贈与とは諾成契約による必要があることから、例えば、父が子供名義で毎年預金をしていてもその預金の存在をその子供が知らない場合には、受贈者(子供)による受贈の意思表示がないことから贈与は成立していないと考えられます。

 そのため、子供名義の預金が行われて何年経過していても民法上の贈与が行われていない以上税務上の時効は成立しないことになります。

 

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