相続税法と民法の概要



1 相続の開始
 
(1) 相続の開始の原因
 人の死亡(本来の意味の死亡と民法第30条による失踪宣告による擬制死亡)(民法882)
(2) 失踪宣告
 次の事実がある場合に、利害関係人が家庭裁判所に請求することによって認められるもの(民法30)
(i) 音信不通の状態で、かつ、生死不明の状態が7年以上続いているとき(普通失踪)
(ii) 従軍、船舶の沈没などの危難が去った後1年間生死不明のとき(特別失踪)
(3) 相続開始時期
 通常の死亡の場合は、現実に死亡という事実が発生した時(戸籍簿に記載された時)、失踪宣告による場合は(i)普通失踪については7年間の失踪期間満了の時、(ii)特別失踪については危難の去った時であり、失踪宣告の審判が確定した時ではありません(民法31)。
 
2 相 続 人
 
(1)
 
法定相続人
 ある人の死亡により、その財産を承継できる者は、民法で定められており、これを「民法で定められているところの相続人」、略して「法定相続人」といいます。
 また、法定相続人にも順位があり、後順位の者は先順位の者がない時にはじめて相続人となります(民法887〜890)。

 第1順位:子及びその代襲者(再代襲者)
 第2順位:直系尊属(ただし祖父母より父母が優先)
 第3順位:兄弟姉妹又はその代襲者

 なお、配偶者は、この第1〜第3順位の者と常に同順位で相続人となります。
 養子や認知した非嫡出子(婚姻していない男女の間に生まれた子)についても、実子と同順位で相続人となります。
 また、相続開始時点でまだ生まれていない胎児についても相続権が認められています(民法886)。
 以上の他、相続人に関しては、(i)相続欠格(民法891)や(ii)推定相続人の廃除(民法892)などの規定があります。
 
(2) 相続人の不存在
 相続人のあることが明らかでない場合(相続人がいるかも知れないが不明の時も含みます。)には、一方では相続財産を管理・清算しつつ、他方では相続人を捜索することになります。これらの一連の手続については、民法第951条〜第958条に定められていますが、最終的にすべての手続が終了し、相続人が存在しないことが確定した場合には、その日から3か月以内に特別縁故者の請求により、その特別縁故者に相続財産の一部又は全部が与えられます(民法958の3)。
 この請求は、被相続人の住所又は相続開始地の家庭裁判所に申し立てます。
 以上の手続完了後に未清算の財産がある場合(特別縁故者の請求がない場合も含みます。)には、その財産は国庫に帰属することになります(民法959)。
 なお、特別縁故者とは、(i)被相続人と生計を同じくしていた者、(ii)被相続人の療養看護に努めた者、(iii)その他被相続人と特別の縁故があった者をいい、財産の分与を受けた特別縁故者は、被相続人から遺贈により財産を取得したものとみなされ、相続税が課税されます(相法3の2)。
 
3 相続分
 
(1)
 
民法の考え方(まず遺言、それがなければ話合いで)
 相続人が確定すれば、その中で遺産の分割について話合いをしなくてはなりません。民法の基本的な考え方は、(i)遺言書があれば、それを尊重して相続人間で話し合って決める、(ii)遺言書が無ければ相続人間で自由に決める、というものです。
 
(2) 法定相続分
 (1)の(ii)で「自由に決める」といいながら、民法第900条では「法定相続分」が定められています。「法定」というと強制力がありそうですが、これはまったく強制力はなく、相続人間での話合いの目安としなさい、という程度のものです。
 ただし、相続税の総額の計算は、法定相続分により分割したものと仮定して計算することになっていますので、法定相続分は熟知しておく必要があります。
 民法第900条の規定は次のようになっています。
(i) 子及び配偶者が相続人である場合・・・・・・子1/2、配偶者1/2
(ii) 配偶者及び直系尊属が相続人である場合・・・・・・配偶者2/3、直系尊属1/3
(iii) 配偶者及び兄弟姉妹が相続人である場合・・・・・・配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
(iv) 子、直系尊属又は兄弟姉妹が複数いるときは、各自の相続分は等しい。ただし、非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の1/2とする。
 なお、昭和55年以前には、上記の(i)〜(iii)の場合の相続分は、次のようになっていました。
(i) 子2/3、配偶者1/3
(ii) 配偶者1/2、直系尊属1/2
(iii) 配偶者2/3、兄弟姉妹1/3
 
(3) 代襲相続人の相続分
 代襲相続人の相続分は、本来相続人となるべきであった人(被代襲者)の相続分と同じになります(民法901)。
 相続人の代襲が行われるのは、(i)被相続人の子が相続の開始以前に死亡したとき、(ii)被相続人の子が民法第891条に定める「相続欠格事由」に該当し相続権を失ったとき、及び(iii)被相続人の子が民法第892条及び第893条に定めるところにより廃除されたときです(民法887(2))。これは、兄弟姉妹が相続人となるときにも準用され、この場合には、(i)〜(iii)の「被相続人の子」を「被相続人の兄弟姉妹」と読み替えます。
 ただし、子が相続人の場合には、子→孫、孫→曽孫のように代襲が引き継がれます(「再代襲」といいます。)が、兄弟姉妹の場合には、その子(被相続人からみたおい、めい)までの代襲しか認められません。
 なお、昭和55年以前には、兄弟姉妹についても再代襲が認められていました。
 
(4) 遺言の効力(指定相続)
 遺言で指示された分割の方法や分割割合について、相続人はこれに従う義務があります。
 しかし、相続人全員(受遺者も含めて)が、遺言の内容と異なった分割をすることに合意した時には、その合意した分割は有効な分割として認められます。
 また、遺言の内容が遺留分権者の遺留分を害している時にも、遺留分権者の減殺請求があれば遺言の内容と異なる分割となります。
 
(5) 特別受益者及び寄与分
 共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき(民法第903条の特別受益者)や、共同相続人中に被相続人の財産の維持又は形成に寄与した者があるとき(民法904の2)には、それらを考慮して相続分を定める旨規定されています。
 実際に何が特別受益の対象になるか又は寄与分としての金額はいくらになるかについては、共同相続人間での話合い(うまくいかなければ調停)によることになります。
 
4 遺産分割の方法
 
(1)
 
分割に関する民法の規定
 民法では遺産の分割について、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」(民法906)とされています。
 また、「被相続人が遺言で遺産の分割を禁じた場合(相続開始の時から5年に限ります。)を除き、いつでもその協議で遺産の分割をすることができる」(民法907(1)、908)とされています。なお、遺言があれば、基本的にはそれに従い(指定分割)、遺言がない場合で相続人間での話合いがまとまらない時には、家庭裁判所に調停を委ねることになります(民法907(2))。
(2) 具体的な分割の方法
 遺産の分割割合が決まれば、次は誰がどの財産を相続するかを決めることになりますが、これについては、遺産をそのままの形で分割する方法等3つの方法があります。
(i) 現物分割・・・・・・ 遺産を現物のまま分割する方法(民法258(2))
(ii) 代償分割・・・・・・ 特定の相続人が自分の相続分を超えて相続財産を取得する代わりに、自分の手持ちの現金又は不動産等を他の相続人に支払う方法(家事審判規則109)
(iii) 換価分割・・・・・・ 相続した財産を売却し、その売却代金で分割する方法(家事審判法15の4(1)、家事審判規則108の3(1))

 

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