使用人Aを出向先法人で専務取締役に就任させ、給与は全額出向元法人である当社で支給する代わりに、出向先法人からは経営指導料をとっています。
(1) |
経営指導料は全額出向先法人の損金として認められますか。
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(2) |
また、当社のAに対する支給額は経営指導料の受入額よりも多いのですが、問題ありませんか。 |
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(1)については、Aは出向先法人では専務取締役ですから、経営指導料として出向元法人へ支払われた金額のうち賞与に相当する金額は、出向先法人において役員賞与として損金不算入となります。出向先法人が支出した金額の報酬と賞与の区分方法は法人税基本通達で決められており、報酬分からの先取りが認められます。
(2)については、出向元法人の必要において出向が行われている以上、較差補てん部分は出向元法人で損金の額に算入され、出向先法人への寄附金とはされません。
法人税法は、役員の給与を次のとおり報酬、賞与、退職給与の三つに区分しています(法法34(3)、35(4))。
役員に対する給与 |
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定期の給与………………………………… |
報酬 |
臨時的な給与 |
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退職給与以外のもの……… |
賞与 |
退職に際して支給するもの… |
退職給与 |
役員報酬は、会社が役員の職務執行の対価として利益の有無に関係なく支払うもので、いわば会社運営のための経費ですから、税法も不相当に高額な部分の金額を除いて損金の額に算入することとしています(法法34(1))。一方、役員賞与は、役員が経営者として会社の業績の向上に寄与したことに対する褒賞として、会社に利益がある場合にその利益のなかから分与されるものですから、税法上は損金不算入とされています(法法35(1))。また、役員退職給与は一種の後払い報酬という考え方によって、不相当に高額な部分の金額を除いて損金経理を条件に損金算入が認められています(法法36)。
(注) |
役員報酬については、その損金算入にあたり損金経理は要件にされていませんが、事実の隠ぺい又は仮装経理によって支給した役員報酬の額は、損金不算入とされています(法法34(2))。 |
以上を使用人の場合と比べて簡単に図示しますと、次のとおりです。
区 分 |
役 員 |
使用人 |
報酬給与 |
原則として……○ |
○ |
賞 与 |
×
(使用人兼務役員の
使用人分…○) |
○
(利益処分によるもの…×) |
退職金 |
原則として……○ |
○ |
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○……損金算入
×……損金不算入 |
さてご質問についてですが、まず出向先法人の支払う経営指導料は、出向先法人が自己の負担すべき給与に相当する金額を出向元法人に支払っている場合は、たとえ経営指導料等の名義であっても、当該使用人に係る給与負担金として取り扱われます(法基通9−2−33(注))。
そして出向社員Aは出向元法人では使用人ですから、出向元法人の業務に従事している限り、出向元法人で支払う給与は毎月の給料及び賞与の全額が損金の額に算入されますが、出向先法人では専務取締役ですから、給与のうち賞与は損金の額に算入されません。したがって、経営指導料として出向元法人へ支払われた金額のうち賞与に相当する金額は、出向先法人において役員賞与として損金不算入となりますので、申告加算しなければなりません。なお、所得税の源泉徴収は、現実にAに給与を支払う出向元法人で行います。
このように出向者が出向先法人で役員になっている場合、出向先法人の支出した当該役員に係る給与負担金の額が報酬と賞与のいずれに該当するかは、次のように区分して取り扱うこととされています(法基通9−2−34)。
(1) |
給与負担金が出向元法人での給与の支給の都度その支給額の範囲内で支出されるものである場合……出向元法人の支給する給与が定期の給与か臨時の給与かによって区分します。
(注) |
出向先法人で使用人兼務役員となっている場合、出向先法人で損金経理した使用人相当額の賞与負担金の額は、通常、出向元法人の基準によって計算した額です。この額が出向先法人の比準すべき使用人に支給した額に比べて高額であれば、賞与負担金のうち比準使用人に支給した額を超える部分の金額は損金不算入になると考えられます。 |
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(2) |
給与負担金の額が一定期間内に出向元法人で当該出向者に支給する給与の合計額を基礎にしてその範囲内で毎月又は一括支出されるものである場合……当該期間内に出向元法人が支給した定期の給与の額までを報酬とし、これを超える部分の金額を賞与にします。つまり報酬分からの先取りが認められるわけです。 |
次に、出向元法人が出向使用人に対して出向先法人との給与条件の較差を補てんしているとき、つまり経営指導料として出向先法人に負担させている金額以上の給与をAに支払っているときは、出向元法人の必要において出向が行われている以上、較差補てん部分は出向元法人で損金の額に算入され、出向先法人に対する贈与とされません(法基通9−2−35)。
「給与条件の較差補てん」については、毎月の給料の出向元・先法人間の差額がこれに該当するのは当然ですが、例えば、出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため、出向元法人が当該賞与を支給した場合も給与条件の較差補てん金として認められます(法基通9−2−35(注)1)。前記した法人税基本通達9−2−34の(2)において給与負担金を報酬部分から先取り計算することを認めているのは、この趣旨によるものともいえましょう。
(注) |
法人税基本通達9−2−34の(2)において給与負担金を報酬部分から先取りすることを認めている実務的な理由として、出向先法人において役員賞与として申告加算すべき金額を算出するにあたり身近にいる出向者本人から給料部分の金額の報告を受ければよいという点もあげられます。出向元法人の人事部門から文書により回答を受けるのは煩雑な場合があるからです。 |
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