目次 II-4


4.簡易課税制度選択の注意事項

 消費税の課税事業者となった場合には、基準期間の課税売上高が5,000万円以下のときに、簡易課税制度を選択するか、原則課税制度を選択するかの判断をしなければなりません。

〈簡易課税制度選択の判断基準〉

(1) 実際の課税仕入率と「みなし仕入率」の比較

 簡易課税制度では第1種事業から第5種事業まで定められた90%から50%までの「みなし仕入率」によって仕入税額控除の額を計算します。

  みなし仕入率>実際の課税仕入率 益税

 実際の課税仕入率よりみなし仕入率の方が高ければいわゆる「益税」が発生します。このような事業者は簡易課税制度を選択する方が有利です。

 基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者が簡易課税制度を選択しようとする場合には、課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しなければなりません。

 ただし、平成16年4月1日以降、最初に開始する課税期間において新たに課税事業者となる場合で、その最初に開始する課税期間(個人事業者については平成17年分)から簡易課税制度の適用を受けようとするときには、上記の原則的な取扱いによらず、その課税期間中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば簡易課税制度の適用を受けることができます(図参照)。

消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限
消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限


(2) 簡易課税制度を選択すると不利になる場合

 基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者の場合には、簡易課税制度を選択することができますが、簡易課税制度が有利なのは、みなし仕入率が実際の課税仕入率より高い場合だけです。しかし、この判断は、課税期間が終了して、決算をしてみないことには本当のところわかりません。

 つまりは、建物を取得したり、機械や車など高額な固定資産を購入した場合には、多額の消費税を支払うことになり、実際の課税仕入率の方が高くなる場合でも、すでに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していれば、みなし仕入率によって仕入税額控除の額を計算し、消費税を納めることになりますから、不利になり、その見きわめが必要になるわけです。

 原則課税の場合には預かった消費税と支払った消費税の差額を納付することから、預かった消費税より支払った消費税の方が多いときは、その差額は還付されますが、簡易課税制度では、みなし仕入率によって納税しますから還付ということはありません。


(3) 簡易課税制度の取りやめ

  いったん、簡易課税制度を選択すると、最低2年間は簡易課税制度の適用を継続しなければなりません。1年でやめるわけにはいきません。このことも選択にあたっては注意すべき事項です。簡易課税制度の適用をとりやめる場合にも、選択をとりやめようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を所轄税務署に提出しなければなりません。

 なお、基準期間の課税売上高が5,000万円超となる事業者は、自動的に原則課税に移行せざるを得ませんので留意ください。

 

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