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II.はじめて課税事業者として消費税を申告する方へ |
消費税法が改正され、納税義務が免除される基準期間における課税売上高の上限が3,000万円から1,000万円に引き下げられることになりました。 この改正は、平成16年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。したがって、個人事業者は平成17年分(平成18年3月確定申告)、事業年度が1年である法人については平成17年3月決算期から適用されます。
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1.消費税という税金のあらまし |
消費税は最終的には、その名のとおり消費者が負担する税金ですが、国等への納税義務は、その消費税を預かっている事業者です。 消費税は消費に広く公平に負担を求めるという観点から金融取引、医療、福祉、教育等の一部を除き、ほとんどすべての国内での商品の販売、サービスの提供等を課税対象として、取引の各段階ごとに5%(うち1%は地方消費税。以下同じ)の税率で課税される間接税です。 消費税は事業者に負担を求めるのではなく、税金分は事業者が販売する商品やサービスの価格に上乗せ(転嫁)されて、次々と転嫁していく中で、最終的には商品を消費し、サービスの提供を受ける消費者が負担することになります。 ただし、転嫁した税額をそのまま納付すると事業者間取引のたびに消費税額が累積するので、受け取った消費税額から既に支払った消費税額を差し引いて、その差額のみを納税すればよいことになっています。
(1) 原則課税のしくみ (1) 年間の「受取消費税額」を計算する 上記の事例1のように、事業者が、売上げが税込みで2,100万円あったとします。消費税率は5%ですから、売上高2,100万円のうち100万円は受け取った消費税ということになります。
売上げに消費税を加算している場合でも加算していない場合でも、売上総額(税込み)の105分の5を受け取った消費税として計算します。経理処理では、売上高を2,100万円で処理する「税込経理」と売上高を2,000万円、100万円を仮受消費税とする「税抜経理」とがありますが、いずれでもかまいません。 (2)年間の「支払消費税額」を計算する 仕入れ、交際費、広告宣伝費、消耗品費、旅費交通費、車輌や器具備品の購入費などすべての支出に含まれる消費税を合計します。ただし、給料や支払利息などは、不課税取引や非課税取引といって支出のなかに消費税が含まれていません。 事例1では、仕入高は1,260万円、水道光熱費42万円、事務所家賃21万円、車購入費63万円、(給料は不課税)の合計1,386万円の課税仕入れ(税込み)があり、そのなかに支払った消費税が66万円あったことになります。
(3) 消費税を申告納付する (1)で計算された受取消費税額から(2)の支払消費税額を控除した残額が、事業者が納付すべき消費税額となります。 事例1では、100万円−66万円=34万円が消費税の申告において納付する税額となります。
消費税は事例1のように預かった消費税から支払った消費税を控除し、その差額を納めるだけのことであり、事業者にとって本来、消費税で損をしたり得をしたりすることはありません。なお、その年度に、建物を取得したり、高額な資産を購入したときには、多額の支払消費税が発生しますから、受け取った消費税より支払消費税が多い場合には消費税が還付されることにもなります。 <納税事務の負担軽減措置等> 消費税の納付税額の原則的な計算方法は以下のとおりですが、事業者の納税事務の負担を軽減するなどのため、次のような措置も講じられています。
(2) 消費税が課税される取引 消費税の課税対象となる取引は、(1)国内で行われる取引と、(2)保税地域から引き取られる外国貨物の輸入取引に限られ、国外で行われる取引は課税対象にはなりません。
(3) 消費税が課税される国内取引の要件 国内において事業として対価を得て行われる資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供が消費税の課税対象となります。 つまり、消費税の課税対象となるのは次の4要件を満たす取引です。
(1) 日本国内において行うものとは 消費税は国内において行う取引(国内取引)に対して課税されますので、国外で行われる取引は消費税の課税対象にはなりません。したがって、例えば、海外出張の際の海外での旅行費用(宿泊代や食事代、その他物品購入費など)は対象外となります。 (2) 事業者が事業として行うものとは 事業者が事業として行う取引を課税対象としていますから、事業者以外の者が行う取引等は課税対象とはなりません。 「事業者」とは、個人事業者(事業を行う個人をいいます。)と法人をいい、事業とは、対価を得て行われる資産の譲渡等が反復、継続かつ独立して遂行されることをいいます。(事業活動に付随して行われる取引も事業に含まれます。) なお、法人が行う取引はすべて「事業として」に該当しますが、個人事業者は、事業者の立場と消費者の立場を兼ねていますから、事業者の立場で行う取引が「事業として」に該当し、消費者の立場で行う資産の譲渡等は「事業として」に該当しません。 例えば、サラリーマンの給料やパート収入は対象外、町内会の会費や冠婚葬祭費も同様、事業として収受するものではありません。マイカー等非事業用資産の売却なども「事業として」に該当しません。ただ、これを中古事業者が買い上げる場合のように、事業者が一般ユーザーや消費者あるいは免税事業者から購入する場合には、その支払額のなかに消費税が含まれているものとみなします。
(3) 対価を得て行うものとは 対価を得て行うものとは、資産の譲渡等に対して反対給付を受けることをいいます。したがって、寄付金、補助金、贈与などの無償取引は原則として課税対象にはなりません。また、利益の配当、宝くじの当せん金等も同様に資産の譲渡対価には該当せず対象外となり、法人の資産の自己使用又は消費も同様に対象外です。 ただし、次に掲げるものは課税対象となります。 イ 個人事業者の棚卸資産等の家事消費や法人の自己の役員に対する資産贈与 ロ 代物弁済、負担付贈与、交換、現物出資等
(4) 資産の譲渡等とは 資産の譲渡等とは、(イ)資産の譲渡、(ロ)資産の貸付け、及び(ハ)役務の提供をいいます。 (イ) 資産の譲渡 売買や交換などの契約により、資産の同一性を保持しつつ、他人に移転すること、例えば、商品、物品、建物などの譲渡をいいます。 なお「資産」とは有形、無形を問わず、およそ取引の対象となるものはすべて含まれます。ただし、土地等の譲渡は、別途、非課税となります。 (ロ) 資産の貸付け 賃貸借や消費貸借などの契約により、資産を他の者に貸し付けたり、使用させる一切の行為をいいます。 また不動産などに、地上権、利用権等の権利を設定する行為も資産の貸付けに含まれます。 ただし、土地や住宅の貸付け、利子を対価とする金銭の貸付けなどは、別途、非課税となります。 (ハ) 役務の提供 請負契約、運送契約、委任契約等に基づいて労務、便益その他のサービスを提供すること、例えば、請負、宿泊、飲食、出演、広告、運送、委任などをいい、プロスポーツ選手、俳優、作家、弁護士、税理士などによるその専門的知識、技能に基づく役務の提供もこれに含まれます。
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