目次 1-5


1−5 税務上の積立金の計上と取崩し(旧商法における利益処分扱い)

Question  旧商法の利益処分では、税務上の積立金は準備金方式により計上又は取崩しをした場合、前事業年度の損金算入又は益金算入処理による所得計算が認められていました。会社法施行に伴い、利益処分がなくなりましたが、会社法及び税務上の処理はどのようになりますか。


Point
 会社法上、株主総会の決議により任意積立金の積立てその他の剰余金の処分をすることができます(会社法452)。税務上は、当該積み立てた金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入し(措法52の3丸数字1)、また、一定期間において益金の額に算入します(措法52の3丸数字5)。ただし、例外として、当該事業年度として決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てた場合には、前事業年度の所得計算上、申告調整を認めることとしています(措法52の3丸数字1)。


Answer


1 旧商法における利益処分等と会社法の考え方

 旧商法第281条の規定の計算書類として「利益ノ処分又ハ損失ノ処理ニ関スル議案」が入っていますが、会社法上はこの書類はなくなり、特に規定されていません(会社法435丸数字2)。つまり、従来、定時株主総会における利益処分案で、利益配当とそれに伴う利益準備金の積立て、役員賞与、利益の資本組入れ、任意積立金の積立て、欠損填補のための任意積立金・準備金の取崩し及び税務上の準備金の計上と取崩しが行われます。

 会社法上、定時株主総会において、株主に対する剰余金の配当(会社法454)、資本金・準備金の増加又は減少(会社法447〜451)、剰余金についてのその他の処分(会社法452)等があげられていますが、特に利益処分案又は損失処理案として計算書類を作成する必要がありません(会社法435丸数字2)。したがって、株主総会の決議がある事業年度において当該事業年度の株主資本等変動計算書に計上されることになります。


2 税務上の積立金の計上と取崩し

 法人で準備金方式による特別償却の規定を受けることができるのは、その適用を受けようとする事業年度において、特別償却に関する規定を受けることに代えて、各特別償却対象資産別に特別償却に関して規定する特別償却限度額以下の金額を損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てた場合で、当該積み立てた金額は、当該事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入できます。例外的に、当該事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てた時も損金の額に算入できます(措法52の3丸数字1)。もちろん、申告書等に特別償却準備金として積み立てた金額の損金算入に関する申告の記載があり、明細書が添付されている場合に限られます(措法52の3丸数字8)。つまり、従来の利益処分による準備金方式について前事業年度の所得計算への申告調整が認められていることとなります。

 また、特別償却準備金として積み立てられた金額は、一定の期間において益金の額に算入されることとなります(措法52の3丸数字5)。

 

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