2 強制執行のしくみ 〜不動産執行、動産執行、金銭債権執行 II-5-2

 
 強制執行の対象は、債務者の財産であって、差押の禁止されていない物であれば、不動産、動産、債権、その他の財産権(ゴルフ会員権、特許権等)のどれでもよいです。ここでは、主に利用される、不動産執行、動産執行及び金銭債権執行について説明します。


【1】 不動産執行の流れ(申立から配当まで、早くとも半年を要します)
 
(1)申立
目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所にします。
対象とする不動産を特定して、申し立てます。

(2)競売開始決定・差押
申立が適法であれば、裁判所が競売開始決定(不動産執行を始めることと、目的不動産を差し押さえることの宣言)をします。
開始決定がされると、法務局が目的不動産の登記簿に「差押」の登記をします。また、債務者及び所有者に競売開始決定が送達されます。

(3)売却の準備
執行官や評価人が目的不動産を調査し、物件の状況、評価額、権利関係等をまとめた資料(「現況調査報告書」「評価書」「物件明細書」の三点あり、「三点セット」といわれています。)が作成され、また、最低売却価額が決められます。

(4)売却の実施
基本的に期間入札の方法で売却が実施されます。
物件情報は、日刊新聞や住宅情報誌などの広告に掲載される他、ファクシミリやインターネットでも入手できるようになってきました。

(5)入札、代金納付
最高価で落札し、売却許可がされた買受人が代金を納付したら、物件の所有権が買受人に移転します。

(6)不動産の引渡し

(7)配当
差押債権者や抵当権者、配当要求した債権者等に対し、法律で決められた順番に従って売却代金が配られます(配当要求などについては、次項参照)。
 
なお、平成15年の改正民法・改正民事執行法で、執行手続の実効性を高める制度改正がなされ、執行妨害への対抗手段が強化されたり(「一括競売」、「売却のための保全処分」、「買受人のための保全処分」、「占有移転禁止の保全処分等の効力」)、競売不動産を買受希望者に内覧させる機会を設ける制度が創設されました。
 
 
【2】 動産執行の流れ(申立から配当まで、早くとも1か月を要します)
 
(1)申立
動産所在地の地方裁判所執行官にします。
どの場所にある動産かだけを特定すればよく、例えば、「10カラットのダイヤの指輪」などというように、どのような動産かまで特定する必要はありません。

(2)差押
差押の対象は原則として債務者が占有する動産です。執行官は、対象動産が債務者の所有物かどうかを調査することなく、債務者が占有する物を差し押さえます。ただし、第三者の所有であることを示すネームプレートが付いているなど客観的に第三者の所有物であると認められる物については、差押の対象から除外されます。
 なお、債権者や第三者が債務者所有の動産を占有している場合、債権者の任意提出、第三債務者の承諾があれば、執行官はこれを差し押さえることができます。
差押は、差押禁止財産を除外し、各動産の価額を評価しながら、執行債権(請求債権+執行費用)の満足に必要な限度内で行われます。
差押により債務者は差押物を処分できなくなります。

(3)執行官保管
もっとも、差押物の保管が債務者に委ねられ、その使用が許可された場合には、通常の用法に従って使用することは許されます。

(4)売却(競り売り)
差押後1週間から1か月以内の日に、競り売り期日が定められます。
競り売り期日に、最高の買受申し出額を申し出た者が差押物を買受け、代金が支払われます。
もっとも、実際、競り売りに参加してくる一般人はいません。差し押さえた物が債務者にとって重要な物であれば、債務者側が誰か買受人をたててくることもありますが、そうでなければ、申立債権者が買い受けるか、買い受けてくれる業者を連れてくる必要があります。

(5)配当
差押債権者や配当の要求をした債権者等配当を受けることのできる債権者に対し、法律で決められた順番に従って売却代金が配られます。


【3】 金銭債権執行の流れ(申立から任意の取立金受領まで、早ければ数週間です)

(1)差押命令の申立及び陳述催告の申立
原則、債務者の住所地を管轄する地方裁判所ですが、債務者の住所地が分からないときは、差し押さえたい債権の所在地(銀行預金を差し押さえる場合はその銀行の所在地を管轄する地方裁判所)にします。
債務者の誰に対する、どのような債権かを特定して、申し立てます。
陳述催告の申立も併せて行います。陳述催告の申立とは、対象債権が現実に存在するかどうか、存在するとしていくらのものか等を知るため、第三債務者に対して、差押債権の有無などにつき回答を求める申立のことです。
あるかないか分からない債権について差押を求めることもできます。陳述催告の結果、第三債務者から「そのような債権はない」との陳述がなされたときは、その債権に対する申立は取り下げます。

(2)差押命令
差押命令が第三債務者、債務者の順に送達されます。
第三債務者に送達された時点で、差押の効力が生じます。

(3)陳述書の送付
陳述催告の結果、第三債務者から、裁判所を介して、債権者に、陳述書が送付されます。この陳述書には、1)債権の有無、2)債権の額、3)支払う意思の有無、4)支払を拒む場合その理由、等が記載されます。

(4)取立(又は配当)
差押命令が債務者に送達された日から1週間が経過すれば、債権者は第三債務者に直接取立(支払の催告)をすることができます。
第三債務者が供託をした場合は、裁判所が配当を行います。

 

メニューへ