4 財産処分の危険を察知したとき〜保全処分
 
 
○ 保全処分ってどんなもの? II-4-0

 
【1】 制度の趣旨
 
 強制執行をするために訴訟を起こし、費用と時間をかけて勝訴の判決(債務名義)を得ても、その間に、債務者が、自己の財産を第三者に処分したり、どこかに隠してしまう場合があります。
 このような場合、判決に基づいて強制執行をしようとしても、目的とする財産がないわけですから、判決は極端にいえば紙切れでしかなくなってしまいます。「目的とする財産がない」ということをもう少し正確にいうと、判決は、債務者(被告)にだけ金銭の支払や物の引渡等を命じているのですから、強制執行の対象となる財産も債務者の財産です。直前まで債務者の財産であったからといって、既に第三者の物になってしまっている財産に対し強制執行することはできないのです。
 このように、将来勝訴判決を得てもその執行ができなかったり著しく困難になるような事態を避けるため、強制執行の対象としたい財産を債務者の手元に一時固定しておく制度が、保全処分です。
 
 
【2】 債権回収で主に用いるのは、「仮差押」と「係争物に関する仮処分」
 
 保全処分には、大きく次の種類のものがあります。

 この中で、債権回収で主に利用するのは、「仮差押」と「係争物に関する仮処分」です。「仮差押」は、例えば、売掛債権を保全するために、債務者の不動産を仮に差し押さえる場合に使います。「係争物に関する仮処分」は、例えば、所有権留保特約付で商品を売った売主が、所有権に基づき買主の元にあるその商品を他に移さないようにする(処分を禁止する、占有の移転を禁止する)場合に使います。


【3】 「仮差押」「係争物に関する仮処分」と民事訴訟との違い

(1)  保全処分が認められるための要件は、(a)保全すべき権利があること、及び、(b)保全の必要性があること、の2つです。(b)は、将来、(a)の権利について勝訴判決を得ても、その実現ができなくなったり、著しく困難になるおそれがあることです。
(2)  保全処分は、速やかにしなければその目的を達成できないですから、立証は、証明ではなく疎明で足りるとされています。
(3)  基本的に、債務者からの反論を聞かず、債権者の提出した書類と債権者からの説明を受けるのみで裁判所が判断を下します。
(4)  保全処分は、訴訟判決が確定するまでの暫定的なものです。
 したがって、保全処分により債務者の被る可能性のある損害を担保するために、裁判所により指定された担保金を積まなければなりません。なお、担保金は、債権者が訴訟で勝訴するなどすれば戻ってきます。
(5)  将来勝訴判決を得て強制執行するときのための制度ですから、訴訟の提起が前提です。債権者が保全処分だけ申し立て、訴訟を提起しないときは、債務者は申立をして保全処分を取り消すことができます。
 
 
【4】 保全処分の作用

 保全処分は、債務者に、相当な心理的打撃を与える場合があります。そのため、保全処分を行ったことで、債務者が任意の支払に応じ、紛争の早期解決に至るということも少なくありません。

 

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