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取引先が手形の不渡りを出した、支払を滞らせた、といった状態に至ったため、早急に債権回収に着手する必要があるとき、約定担保のない債権であっても、商品の売掛金債権であれば動産売買先取特権を利用できることは前項のとおりです。
同じく法定担保である民事留置権、商事留置権も、約定担保のない債権の回収に有用です。
【1】 民事留置権、商事留置権とは?
民事留置権とは、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、そのものを留置する権利をいいます。この権利の行使により、弁済を間接的に強制することが期待できます。例えば、自動車工場が自動車を整備し整備代金債権が発生したとき、この代金の弁済を受けるまで自動車を留置するといった具合です。
商事留置権とは、債権者債務者とも株式会社等の商人であるという間柄であるとき、商行為によって生じた債権の弁済を受けるまで、債権者が商行為によって占有するに至った債務者所有の物又は有価証券を留置する権利をいいます。債権がその占有物に関して生じていなくても、その占有物に商事留置権が認められるので、商人間における大量かつ継続的な取引によって生じる債権の回収を図ることができるのです。
例えば、倉庫業者が債務者所有の機械を保管しているときに、以前に全く別の契約により発生した保管代金の弁済を受けるまで、機械を留置するといった場合が考えられます。
【2】 民事留置権には優先弁済権はなく、競売権があるのみ
民事留置権には、優先弁済権はありません。つまり、他の債権者に優先してその物から弁済を受ける権利はないので、債務者が破産宣告を受けてしまったら、抜け駆けは許されず、その効力は失われます。担保権がないのと一緒で、債務者の財産から他の債権者と平等に按分弁済を受けることができるに過ぎないということです。
他方で、留置権には、民事留置権、商事留置権を問わず、競売権があり、「動産競売申立」によってその物を換価し、その換価金の交付を受けることになります。これにより、留置権者は債務者に対し換価金引渡債務を負うのですが、この債務と債務者に対する債権とを相殺することができます。その結果、事実上優先弁済を受けたと同じこととなります。
もっとも、民事留置権については、競売を申し立てていても、競売手続の途中で債務者が破産宣告を受けたら前述のとおり効力はなくなります。また、競売は終えたが換価金の交付を受ける前に債務者が破産宣告などを受けてしまった場合、その後に換価金の交付を受けその引渡債務と債権とを相殺しようとしても、このような相殺は法律上禁止されています。
【3】 商事留置権の効力
商事留置権は、民事留置権と異なり、商人間の取引に基づくものであり、その担保力を尊重する必要があることから、破産、会社更生、民事再生の各倒産手続において、留置物に優先弁済権が認められています。
したがって、例えば、債務者が破産宣告を受けても、商事留置権はその効力を失わず、破産管財人を相手に「動産競売申立」を行い、破産法で認められた優先弁済権としての効力の範囲内で、債権を回収することができるのです。
【4】 民事留置権も商事留置権も成立している場合には、商事留置権を
上に説明したとおり、商事留置権の方が強い効力を持ちます。ですから、債務者の物を占有しており民事留置権も商事留置権もどちらも成立するという場合には、商事留置権を行使するべきです。
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