5 回収遅延になったら
 
 
1 こんな手形は受け取ってはいけない! I-5-1

 
 信用状態が悪くなった会社は、取引先を騙して取込み詐欺を図ろうとする意図で詐欺的な手形を発行したり、資金の当てのない手形を振り出したりすることがあります。ここでは、受け取ってはいけない手形の典型を示しておきましょう。

【1】 有害的記載事項のある手形
 
 手形の記載事項には、その記載がなければその手形が無効になる「絶対的記載事項」や、記載しなくても差し支えないが記載されればそれなりの効力を持つ「任意的記載事項」、その記載があれば手形自体が無効になる「有害的記載事項」があります。
 絶対的記載事項に列挙されている項目は「統一手形用紙」にあらかじめ印刷されているものや、金額や振出人、振出日など手形の知識がないものでも常識で記載すべきであるものです。
 問題となる有害的記載事項の例としては「売買の目的物の到着と引替えに支払う」などというように「支払に条件を付けるような文言があるもの」があります。このような手形は、この記述だけでなく全体が無効です。

 このような手形を振り出すケースは、最初から取込み詐欺をする目的で取引を開始する場合が多いので、手形の券面に注意をしなければいけません。例えば、新規の取引先からもらった手形を取立てに出したら銀行で支払を拒絶され、その取引先に抗議に行ったら、会社が閉鎖されていて取込み詐欺にあったことが判明したというようなことがあり得ます。
 
 
【2】 裏書の不連続の手形
 
 手形法では手形は支払に使われるだけでなく、「裏書」という行為を経て転々流通していくものと規定されています。実はこの前提こそが手形の便利なところであり、恐ろしいところでもあります。
 手形が最初の受取人から次の承継取得者に所有権が移るとき、手形の裏面に「裏書」を行います。当初の受取人から最終所持人に到るまで裏書きが途切れることなく続いていれば問題はありません。
 このように裏書きが問題なく続いていることを「裏書の連続」といいますが、何かの事情でつながっていない場合があります。これを「裏書の不連続」といって、手形の最終所持者は手形権利者としての推定を受けられなくなり、支払を受けられなくなるおそれがあります。

 
【3】 廻り手形

 手形法では手形は裏書譲渡することができます。得意先が振り出した手形ではなく、他の者が振り出した手形を裏書譲渡したものを回収することがあります。このような手形を「廻り手形」といいます。廻り手形は、得意先に手形決済資金の当てがないか、銀行から信用されていないから売掛代金の支払に充ててくることが多いのです。廻り手形を売掛代金の支払に充ててくるようなところはあまりよい取引先ではありません。
 廻り手形を受け取ったときは、手形を発行した企業を調べて実態のある手形発行であることを確かめ、不渡りを被ることを避けなければなりません。
 また、廻り手形については、一度銀行で割引に回してみましょう。金融機関では信用力の低い手形はいくら割引枠があっても割引してくれません。信用状態に不安があるため取引の継続を検討しているような得意先振出の手形を割引に出してみれば、銀行が見事に信用状況を審査してくれます。このような銀行の対応を利用して取引先の信用調査を行うのも一法です。

 
【4】 サイトの長い手形

 手形の振出日から期日までの期間をサイトといいますが、このサイトが長い手形も不渡りになる可能性が高いので受け取ってはいけません。

 

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