| 3 取引の時には証拠を残そう! | I-1-3 |
| 【1】 不良債権は“ええかげん”な慣行から発生する! 正常な債権が突如不良債権に変わって回収不能になることはあまりなく、長年のルーズな取引慣行の中から徐々に正常債権が不良債権の予備軍に変貌しながら、最後には完全な不良債権に変わることが多いといえます。 “ええかげん”な慣行には大きく二つあります。 まずひとつは、代金回収におけるルーズな慣行です。例えば、代金回収において当初約束した条件と異なる回収となることはよくあります。即座に適切な対応をとれば正常に回収できたものを、得意先に遠慮した結果、ルーズな応対をしたばかりに不良債権化したということもよくある話です。 もうひとつは、口約束による「なあなあシゴト」です。なあなあシゴトであっても取引先との関係がうまくいっているときには問題は顕在化しませんが、うまくいかなくなると債権回収が滞るわけです。つまり、口約束では債権の存在そのものをめぐって得意先との間に見解の相違が生じ、得意先は支払う必要がないと考えているから払わないということになるわけです。 このような場合に、裁判などの法律的手続に入ったときには、当方としては当然存在すると思っていた債権が、裁判では立証できずに終わることもありえるわけです。 【2】 通常の商取引の場合にはどのように考えるのか 通常の継続的商取引では「継続取引基本契約書」を作成して、取引条件を明確にした上で、取引があったことを証明する書類を整備して整然と記帳する必要があります。取引があったことを証明する書類には発注書・納品書・請求書などの当方が作成する証憑と、運送会社を使った場合は送り状や、得意先のサイン又は受領印のある受領書がこれにあたります。 例えば、民事訴訟になった場合に当方から得意先に100万円の債権があることを立証するためには、500万円の商品を納めて400万円の回収があったことの証拠が必要です。場合によっては、帳簿上の記載だけで裁判所に証拠として採用してもらう場合もあるかもしれませんが、基本的には500万円の商品を納品して先方が受領した証拠が必要ですし、相手の対応によっては400万円しか回収していないことの証拠も必要です。したがって、帳簿上の記載だけを過信しないよう注意する必要があります。 次に問題になるのが、ラウンド入金です。ラウンド入金とは、例えば503,129円請求したところ、50万円入金することをいいます。この場合、差額の3,129円についてはどの納品に係る債権なのか明確ではありません。このような取引慣行を長年継続していくと、この回収差額については、債権の存在を裁判の上で立証していくのが極めてむずかしくなります。 したがって、ラウンド入金については得意先と協議して、なくしていくよう粘り強く交渉を続けていくとともに、回収差額が生じた場合にはその発生原因を必ずつかんで、適時・適切に処理する必要があります。 【3】 請負仕事の場合にはどう考えるのか 請負仕事の場合は継続的商取引と大きく異なり、請負契約書を作成し、得意先から発注書を提出してもらって仕事を開始するのが本来のあり方です。 ところが、請負仕事の場合は往々にして請負契約書や発注書の作成なしに、口約束だけで仕事を開始してしまうことがあります。この場合には、そもそも請負契約の存在自体があったかどうかが争点になることもあれば、請負契約の存在については当事者双方に争いがなくても、細かい仕様について争点になることがあります。 このような場合に裁判手続においてこれらの債権の存在を認めてもらうためには、請負契約が当方の主張どおりに存在していたことを立証しなければなりません。 |