目次 II-5(2)


(2) 貸宅地の評価

(1)  借地権又は地上権の目的となっている宅地(定期借地権等の目的となっている宅地については(6)を参照)

 借地権又は地上権の目的となっている宅地の価額は自用地としての価額から、借地権の価額又は地上権の価額を控除した金額によって評価します。
 借地権の価額は、自用地価額にその宅地の存する地域について定められた借地権割合を乗じた金額によって評価することになります。
借地権の価額= 自用地の価額×借地権割合
貸宅地の価額= 自用地の価額−借地権の価額
自用地の価額×(1−借地権割合)

 なお、借地権の取引慣行がない地域においては借地権の価額は評価しませんが、貸宅地の価額は上記の計算によらず、自用地の価額の80%で評価します(現に、他人の家屋が建っていることによる借地借家法の制限があるとの考えによります)。
 自用地価額1億円、借地権割合70%とすると、
 借地権の価額=1億円×70%=7,000万円
 貸宅地の価額=1億円×(1−0.7)=3,000万円
となります。
 また、地上権(建物の所有を目的とする地上権〔借地権〕及び民法第269条の2の規定による区分地上権を除きます)については、地上権が設定されていないものとした場合の価額に、その権利の残存期間に応じて、次の表に掲げる地上権割合を乗じて計算した金額によって評価します。
 地上権の価額=自用地の価額×地上権割合
 貸宅地の価額=自用地の価額−地上権の価額=自用地の価額×(1−地上権割合)

残存期間 地上権割合 残存期間 地上権割合
10年以下
10年超15年以下
15年超20年以下
20年超25年以下
25年超30年以下
5%
10%
20%
30%
40%
30年超35年以下
35年超40年以下
40年超45年以下
45年超50年以下
50年超
50%
60%
70%
80%
90%

 存続期間の定めのない地上権については、地上権割合は40%とします。

(2) 使用貸借で貸している宅地
甲は、乙にその所有する土地を使用貸借により貸し付けています。
 使用貸借とは、当事者の一方が無償で、使用及び収益をした後、返還することを約して相手方よりあるものを受け取ることをいい、土地の固定資産税相当額以下の少額の地代で貸している場合等が、これに該当します。
 使用貸借に係る使用権の価額は零として取り扱いますので、甲所有の土地は、たとえ乙の建物が存在しても、借地権の価額を控除せず自用地価額で評価します。

(3) 相当の地代を収受している場合の宅地
 借地権の設定に際し、その設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の慣行のある地域において、当該権利金の支払に代えて、相当の地代を支払うことがあります。
 この場合には、借地権の設定はなかったものとして取り扱われますが、相当地代設定時以降土地の価額は変動(通常は上昇)しますので、評価時点においては相当地代と実際に収受している地代とに差が生じている場合があります。そこで、貸宅地及び借地権の価額は、相続開始時、贈与時又は地価税の課税時期において、実際に収受している地代が相当の地代であるかどうかにより以下のように計算します。

 (ア)  相当の地代である場合
貸宅地価額…… 自用地価額の80%で評価
借地権価額…… 零(評価しない)
 ただし、その土地所有者が、同族関係者となっている同族会社に貸している場合において、その同族会社の株式の評価において純資産価額を算定する際は、借地権の価額は零としないで、貸宅地を評価するときに控除した自用地価額の20%相当額とします。
 (イ)  相当の地代に満たない地代である場合
貸宅地価額…… 自用地価額−次の借地権価額(ただし、計算した金額が自用地価額の80%を超えるときは自用地価額の80%で評価します)
借地権価額…… 次の算式により計算した価額
自用地価額 × 借地権割合 × 1− 実際支払地代の年額−通常の地代の年額
相当の地代の年額−通常の地代の年額
  (注1)  相当の地代の年額=課税時期の属する年以前3年間の自用地価額の平均額×6%
  (注2)  通常の地代の年額=(自用地価額−借地権価額)の課税時期の属する年以前3年間の平均額×6%
 自用地価額1億円、実際地代200万円、通常地代100万円、相当地代500万円、借地権割合80%とすると、
 貸宅地価額= 1億円−6,000万円(借地権価額)=4,000万円<1億円×80%=8,000万円のため4,000万円となります。
 借地権価額=
1億円×80%× 1− 200万円−100万円
500万円−100万円
=6,000万円

(4) 「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合(使用貸借以外の場合)
 「土地の無償返還に関する届出書」は、土地所有者と借地人間において将来無償で借地権を返還することを約し、これを税務署に届け出たものであり、この場合の借地権の価額は零として扱いますが、宅地の評価に当たっては自用地価額から借地権価額(零)を差し引くのではなく、自用地価額の100分の80に相当する金額によって評価します。これは、(2)の使用貸借の場合には宅地が自用地価額で評価されることと比較すると、使用貸借はその無償性に起因して建物の所有を目的とする場合であっても借地借家法の適用がないのに対し、使用貸借以外の土地については、借地借家法等の制約を受けることにより、その利用に一定の制限を受けるとの考えによります。

 

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