目次 I-7


7 内枠の外部拠出型退職給付制度の廃止


Question
 当社は税制適格退職年金制度を採用しており、退職金規程では、退職金の総額を決め、その一部を適格退職年金契約から給付し、残りの部分を当社の退職一時金制度から現金で支給することとしています。このたび、税制適格退職年金制度の運用状況が芳しくないので、適格退職年金契約を解除し、退職一時金制度に一本化しようと考えています。この場合の会計処理はどのようになりますか。



Answer

(1) 内枠設定と外枠設定

 退職給付制度による退職金の支給を退職一時金制度によることと規程し、その一部を適格退職年金制度から支払われるような設計の仕方を内枠設定といいます。これに対して、全く別の制度として、税制適格退職年金制度から退職金が支給されるような設定の仕方を、外枠設定といいます。

 内枠設定の場合、税制適格退職年金契約を解除しても、年金選択の機会は失われますが、従業員の退職金の過去勤務分、将来期待分には影響はありません。


(2) 税制適格退職年金契約の解除

 税制適格退職年金契約を解除した場合、その年金資産は従業員あるいは受給者、待期者に帰属します。受給者、待期者に対しては、年金資産を分配して清算するか、閉鎖型適格退職年金制度として存続させるかの選択が必要になります。

 従業員に対しては、分配するのか、そのまま据え置いて退職時に退職一時金とともに支給するのか、どちらかの選択になります。分配した場合、支給した金額を、退職時に支給する退職金の総額から減額することになります。

 従業員に対して、退職時に退職一時金とともに支給する方法を、併せ給付といいます。この場合は、税制適格退職年金制度からの支給部分について、税制適格退職年金制度から退職一時金制度へ移行したと考え、移行前後の退職給付制度を一体のものと考えるのが妥当だと思います。一方、税制適格退職年金の解除を行っているので、税制適格退職年金制度の終了を認識し、退職一時金制度の退職給付債務の増額すなわち過去勤務債務を認識するという考え方もあります。しかしながら、確定給付型の退職給付制度間の移行と実質的に変わりないのに、終了損の認識を回避し、過去勤務債務償却により遅延処理を行うのは、実態を反映していないといえます。


(3) 総合型厚生年金基金制度からの給付金を内枠設定している場合

 総合型厚生年金基金制度からの給付金を退職一時金制度の内枠に設定している場合にも、当該基金を脱退して、当該基金からの給付相当額を退職一時金制度に移行することがあります。総合型厚生年金基金制度を採用している場合には、一般的に退職給付債務を計上することなく毎期の掛金を費用処理しています。したがって、総合型厚生年金基金制度を脱退したとしても、退職給付会計での終了の処理は行われません。

 総合型厚生年金基金制度は加算部分の薄い制度が多いため、近年の年金資産の運用低迷により資産不足状態の基金がほとんどです。このため、総合型厚生年金基金を脱退する場合、年金不足部分を脱退時に拠出しなければならないことになります。

 会計上の処理は、脱退時の拠出金は脱退に伴う損失として、特別損失に計上することになります。また、総合型厚生年金基金制度の給付部分が退職一時金制度に移行したことについては、もともと退職給付債務を計上していませんので、確定給付型の退職給付制度間の移行とみなすことはできません。

 この脱退により、退職一時金制度の退職給付債務が一時的に増加します。その増加部分を過去勤務債務として処理するか、通常の退職給付費用に含めるか、あるいは脱退に伴う損失に含めるか、考え方により選択肢があります。私見では総合型厚生年金基金の脱退に起因して発生した費用であるため、脱退に伴う損失に含めて特別損失に計上するのが適切と考えます。

 

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