第 IV 章 オフバランス戦略による価値創造
 
 企業価値を高める戦略の一つとして、オフバランス戦略が注目されています。企業の所有する資産の価値を増大させるという手法とは逆に、企業の持つ資産を切り離すことで、そのリスクや資金負担を軽減させ企業価値の増大につなげるものです。第IV章ではこのオフバランス戦略を扱います。オフバランスのための手法の中でも、特に資産の流動化について、そして2006年3月期から全面適用される予定の減損会計をどのように利用していくかといった点を見ていきましょう。


第1節  資産の流動化
 
 Q

 資産のオフバランス化はどのように行うのか?

 A

【各種資産をオフバランス化する方法】

 以下の図表に従って、各種資産をオフバランス化する方法を、資産の流動化を中心に見ていきましょう。



(1) 売掛債権の流動化

 売掛金や受取手形を売却して、売掛債権回収期間を短縮することにより短期運転資金調達します。また、得意先に対する貸倒れリスクも移転することが可能です。具体的には、特定目的会社(SPC)への債権譲渡を行って、SPCが投資家へ債権を証券化して売り出したり、SPC自体がコマーシャルペーパー(CP)等を発行して資金調達を行ったりするスキームや、ファクタリング会社と言われる債権買取・回収会社へ債権を売却するスキームなどがあります。

(2) 事業用設備の流動化

 事業会社にとって本業を支える資産であるため、リスク自体が本業のリスクと同様であること、また、技術的な優位性に関わる機密情報を含む部分を、外に出すことが難しいことが特徴として挙げられます。したがって、これまで多くの例があるわけではありません。しかし、この手法も徐々に浸透しつつあり、新たな設備投資管理のためにキャッシュ・フローを調達することや、あるいは本業の事業リスク自体の一部を回避することが可能になります。

 代表的な手法としては、セールス・アンド・リースバックという手法があります。資産の「使用」と「所有」を分離する考え方に基づきます。

(3) 不動産の流動化

 SPCを介して、SPCに対して当該不動産自体や不動産の信託受益権を譲渡し、それに基づいて、投資家にSPC が社債等を発行する仕組みが一般的です。不動産の流動化により、保有不動産の含み損益を現時点で表面化させることができるほか、将来的な時価下落のリスクや地震等によるイベントリスクを削減することができます。

(4) 無形固定資産のオフバランス化

 無形固定資産のうち、知的財産については、特許権の証券化を行う例があります。例えば、松竹のケースでの流動化の対象であるテレビ放送権は著作権の一種ですが、松竹の貸借対照表には計上されていませんでした。したがって、オフバランス化ではありませんが、オフバランス資産の有効活用と言えるでしょう。その他無形固定資産については、賃借店舗について入居時に家主に支払った差入保証金を証券化して、オフバランス化するような例があります。

(5) 有価証券、その他の投資のオフバランス化

 企業の有する有価証券は、保有目的により会計基準が定められています。そのうち「その他有価証券」に分類される有価証券は時価の適用が求められます。特に、今まで一般的であった「株式持ち合いのために保有している株式」はこれに該当しますので、時価によるリスクを有することになります。実際に新金融商品会計基準適用後、持ち合い株式の解消が加速しています。

 

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