目次 I


I.現物給与の意義と課税上の取扱い

 給与や賞与は一般に金銭で支給されるのが普通ですが、金銭以外の「物又は権利その他経済的な利益」をもって支給されることもあります。通常これを現物給与(所得税基本通達では「給与等とされる経済的利益」)といいます。所得税法上各種の所得の収入金額には、金銭以外の物や権利その他の経済的な利益も含まれることとされています(所法36(2))から、役員や使用人がその地位に基づいて企業などの使用者から支給を受ける金銭以外の物――現物給与――についても給与所得の収入金額に算入し、その支給の際には、通常の金銭で支給される給与に上積みして、所得税の源泉徴収の対象にしなければなりません。

 これらの現物給与の中には、有価証券を支給する場合のように、その受給者にもたらされる経済的効果の面で金銭給与とほとんど差異がないものもあります。しかし、現物給与といわれるものの中には、(1)職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの、(2)換金性に欠けるもの又は困難なもの、(3)その評価が困難なもの、(4)受給者側に物品などの選択の余地がないものなど、通常の金銭給与と異なる性質があり、また、(5)政策上特別の配慮を要するものなどもあるため、特定の現物給与については、法令や取扱通達において、その特殊性に応じた課税上の取扱いが定められています。

 なお、現物給与の取扱いについては、日本で就労する外国人社員に支給されるものも原則として同様の取扱いとなることに留意する必要があります。

 

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