目次 III-3


3 寄附金の損金不算入額

 寄附金の損金不算入額は、寄附金の内容によって異なります。また、法人の種類によってもその内容が異なりますが、普通法人を前提とした場合、次の通りになっています。

 (A) 国または地方公共団体に対する寄附金

 国又は地方公共団体に対する寄附金については、(D)で述べる一般の寄附金の損金算入限度額の計算の対象となる寄附金の額の合計額には含めず、その全額を損金の額に算入することが認められています。この取扱いは、利益処分経理により支出した場合であっても同様です。

 ここで国または地方公共団体に対する寄附金とは、国または地方公共団体において採納されるものをいいますが、最終的に国または地方公共団体に帰属するか否かが重要になります。

 例えば、国立または公立の学校等の施設の建設または拡張等の目的をもって設立された後援会等に対する寄附金であっても、その目的である施設が完成後遅滞なく、国または地方公共団体に帰属することが明らかなものについては、国または地方公共団体に対する寄附金に該当します。これに対して、国または地方公共団体に採納の手続きを経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかである等、最終的に国または地方公共団体に帰属しないと認められるものは、国または地方公共団体に対する寄附金には該当しません。

 また、法人が被災者に対して義援金等を支出した場合の取扱いは次に通りになっています。すなわち、法人が、災害救助法第2条の規定に基づき都道府県知事が救助を実施する区域として指定した区域の被災者のための義援金等の募集を行う募金団体(日本赤十字社、新聞・放送等の報道機関等)に対して拠出した義援金等については、その義援金等が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金趣意書等において明らかにされているものであるときは、地方公共団体に対する寄附金として取り扱われます。

 なお、海外の災害に際して、募金団体から最終的に日本赤十字社に対して拠出されることが募金趣意書等において明らかにされている義援金等については、(C)で述べる特定公益増進法人等である日本赤十字社に対する寄附金に該当します。


 (B) 指定寄附金

 指定寄附金とは、民法第34条の規定により設立された法人その他公益事業を行う法人または団体に対する寄附金のうち、一定の要件に該当するものとして財務大臣が指定した寄附金をいいます。ここで一定の要件とは、次に掲げる要件を満たすことをいいます。

   広く一般に募集されること

   教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てることが確実であること
 
 そして、財務大臣の指定があったときは、これを告示することになっています。指定寄附金には、財務大臣が職権により一般包括的に行う包括指定と、募金団体である公益法人からの申請に基づき、その寄附金の使途や目標額、対象者、募金期間などの諸事項を個別に審査した上で行われる個別指定に分けることができます。


 (C) 特定公益増進法人に対する寄附金

 特定公益法人とは、公共法人、公益法人等その他特別の法律により設立された法人のうち、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定める法人をいいます。

 特定公益増進法人に対し、その主たる目的である業務に関連する寄附金を支出した場合には、その寄附金の額の合計額については、(D)の一般の寄附金の損金算入限度額までの金額を限度として損金算入が認められます。

 特定公益増進法人の主たる目的である業務に関連する寄附金であるかどうかは、特定公益増進法人の募金趣意書、事業計画書、募金計画書の写し等を総合勘案して判定することになっています。

 また、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対し、その認定NPO法人が行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄附金を支出した場合には、その寄附金と特定公益増進法人に対する寄附金との合計額について、(4)の一般の寄附金の損金算入限度額までの金額を限度として損金算入が認められます。

 特定非営利活動法人(NPO法人)とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とする等の要件を満たし、NPO法の規定に基づいて設立された法人をいいます。また、認定NPO法人とは、NPO法人のうちその組織運営及び事業活動が適正であることならびに公益の増進に資することにつき、一定の要件を満たすものとして、国税庁長官の認定を受けたもの(その認定の有効期間が終了したものを除きます、認定の有効期間は、原則として国税庁長官の定める日から2年間とされています)をいいます。

 このように特定公益増進法人及び認定NPO法人に対して支出した寄附金については、そのうち一般の寄附金の損金算入限度額までの金額の損金算入が認められ、損金算入限度額を超える部分の金額については一般の寄附金の額と合わせて損金不算入額の計算をすることになります。

 なお、上記の損金算入の取り扱いは、利益処分経理により支出した場合であっても同様です。


 (D) 一般の寄附金の損金算入限度額

 法人が支出した寄附金の額の合計額のうち、次に掲げる算式により計算した損金算入限度額を超える部分の金額は損金の額に算入されません。この場合において、法人が支出した寄附金の額の合計額には、次の寄附金の額の合計額は含めません。

   国または地方公共団体に対する寄附金の額

   指定寄付金の額

   特定公益増資法人及び認定NPO法人に対する寄附金の額(損金算入限度額を超える場合には、損金算入限度額相当額)

 
損金算入限度額= {(期末の資本等の金額×当期の月数/12×2.5/1,000)
  +(当期の所得金額×2.5/100)}×1/2

資本等の金額とは、資本の金額または出資の金額と資本積立金額の合計額をいいます。なお、資本等の金額がマイナスになる場合は、0とします。
当期の月数は、暦に従って計算し、1月未満の端数が生じた場合には、切り捨てます。
当期の所得金額は、別表4上のいわゆる仮計の額に、当期において支出した寄附金の額の全額を損金の額に算入しないものとしたところで計算した金額をいいます。

 

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