目次 II-4


4 使途秘匿金

(1)使途秘匿金の意義

 使途秘匿金とは、法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名または名称及び住所または所在地ならびにその支出事由(相手方の氏名等)をその法人の帳簿書類に記載していないものをいいます。


(2)使途秘匿金の支出に対する課税の特例

 使途秘匿金を支出した場合には、所得の計算と税額の計算において注意が必要です。まず、使途秘匿金の支出があった場合、その支出の額は損金の額に算入されません。したがって、法人が使途秘匿金の支出を、交際費等の費用として処理している場合には、申告調整が必要になりますが、仮払金等の資産として処理している場合においても、申告調整が必要になると思われます。

 次に、使途秘匿金の支出があった場合、その支出額に対して40%の追加課税が行われます。この場合、通常の法人税の額とは別に、使途秘匿金の額の40%相当額の税負担が生じる点に注意が必要です。したがって、赤字決算の法人にあって、通常の法人税が生じない場合においても、使途秘匿金に対する追加課税の税負担は発生します。なお、税負担は法人税だけにとどまらず、地方税にも及びますので、その支出額とほぼ同額(支出額の約87%)の税負担が生じる結果となります。


(3)使途秘匿金の追加課税が行われない場合

 法人の帳簿書類に相手方の氏名等の記載がない場合には、すでに述べたように、使途秘匿金として追加課税が行われますが、帳簿書類に相手方の氏名等の記載がなくても、次に掲げる場合には、追加課税が行われないことになっています。

 (A) 相当の理由がある場合
 (B) 資産の譲受けその他の取引の対価の支払としてなされたことが明らかな場合
 (C) 税務署長が認めた場合


(4)使途秘匿金と費途不明金

  法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないもの(費途不明金)は、損金の額に算入されません。したがって、その支出の目的や内容がたとえ交際費等に該当する場合であっても、交際費等の損金不算入の対象とはならず、別途、損金不算入として申告調整することになります。

 この規定の趣旨は、法人が費用として支出したが、その費途について税務当局に対し明らかにしないため、その支出が法人の事業と関係があるか否かの判断ができないため、このような費途不明金はすべて損金不算入となっています。

 

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