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3.企業組織再編税制のフレームワーク

 企業組織再編成時における課税問題を考えるときには、以下の三つの側面があります。

 (1) 組織再編当事法人に係る法人税
    企業組織再編成により移転する資産の譲渡損益の額の取扱い
 (2) 組織再編当事法人の株主に係る課税問題
    株式の譲渡損益の額とみなし配当の取扱い
 (3) 当事法人に係るその他の課税問題
    登録免許税・消費税・不動産取得税などの取扱い

 この中で特に重要なのは、(1)の企業組織再編成により移転する資産の譲渡損益の額の取扱いです。

 平成13年度の税制改正により、企業組織再編税制では、組織再編成により法人が有する資産を移転する場合には、原則として時価による取引として譲渡損益の額を認識すること(時価譲渡)となりました。ただし、その組織再編成で資産を移転する場合であっても、実質的にその資産に対する支配が継続されていると認められる場合、すなわち、資産を移転する前後で経済実態に実質的な変更がない場合は、特例として、資産は帳簿価額で移転するとし、譲渡損益の額を認識しないこと(簿価引継ぎ又は簿価譲渡)となりました。

 移転する資産の譲渡損益の額を認識しない組織再編成、すなわち、資産の譲渡損益に対する課税が繰り延べられる組織再編成の特例とは、

 (a) 企業グループ内の組織再編成
 (b) 共同事業を行うための組織再編成

に限られ、さらに一定の要件を満たすことが必要です。この組織再編成の特例に当てはまる場合は、実質的にその資産に対する支配が継続されていると認められ、移転資産は簿価引継ぎ又は簿価譲渡が強制適用となり、譲渡損益の額に対する課税はありません。この一定の要件の下、資産について帳簿価額により移転し譲渡損益の額を認識しない組織再編成の特例を、税法では、「適格組織再編成」といいます。

 営業譲渡や買収目的の合併など、企業組織の再編成を行う目的ではない場合の資産の移転に対しては、原則どおり、時価譲渡として譲渡損益の額を認識し、当該法人の所得の金額を計算することになります。

 

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