目次 II-1 5


5.未成工事支出金

(1)勘定科目の概要

 未成工事支出金は、未完成工事に要した工事原価項目を集計し、棚卸資産として計上するものです。

 未成工事支出金は、材料費・労務費・外注費・経費に分類して管理する必要があります。

 なお、工事進行基準適用工事では、支出した工事原価を期中は未成工事支出金として計上しますが、決算時において完成工事原価に振り替えます。その結果、未成工事支出金の貸借対照表価額は、原則として工事完成基準適用工事の未完成工事における工事原価のみとなります。


(2)会計処理

 建設業においては、受注案件ごとに支出額を集計する個別原価計算が一般的であり、そのための個別工事原価台帳の整備が必須です。

 下記図表II−1−5の工事一覧表のうち、2物件は工事進行基準適用工事(この場合(S)で表記)のため、決算時には完成工事原価に振り替えられ、最下段の工事原価50,000千円のみが未成工事支出金残高として計上されます。


図表II−1−5 個別工事原価台帳の例

工事番号:1−1K−0001
工事名称:Aマンション新築工事
発生日
(3月)
摘要 材料費 労務費 外注費 経費 累計
内訳 金額
3/15 生コン代 30,000         80,000
3/25 設計料       設計料 50,000 50,000
3/25 現場作業員   10,000       80,000
3/31 外注工事     50,000     150,000
30,000 10,000 50,000   50,000 360,000

工事一覧表
工事No. 工事名称 発注者 工期 H23年4月 H23年5月
H24年3月
H23年度計
1−1K−
0001(S)
Aマンション新築工事 A社 H23.5〜
   H25.3
45,000 50,000 360,000
1−1K−
0002(S)
B市庁舎改築工事 B市 H23.12〜
   H24.9
60,000 114,000
1−1D−
0001
C市道路補修 C市 H24.2〜
   H24.5
30,000 50,000



【事例II−1−12】未成工事支出金の計上と原価振替(1)

請負金額1,000,000千円(消費税別)、工期平成23年5月1日〜平成25年3月31日の工事を受注した。
工事総原価は900,000千円(消費税別)と見積もられた。
消費税の取扱いについては、簡略化のため未成工事支出金の全額が課税仕入れ等に該当するとみなしている。そのため、個々の仕訳に消費税の取扱いを付記していない。

<工事進行基準による会計処理>
(1) 平成23年5月〜平成24年3月の間に発生した工事原価360,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 360,000 (貸方)工事未払金    378,000
     仮払消費税等    18,000
(2) 平成24年3月31日(決算日)において、完成工事原価を計上する。
(借方)完成工事原価  360,000 (貸方)未成工事支出金 360,000
(3) 平成24年4月〜平成25年3月の間に発生した工事原価540,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 540,000 (貸方)工事未払金    567,000
     仮払消費税等    27,000
(4) 平成25年3月31日(竣工時)において、完成工事原価を計上する。
(借方)完成工事原価   540,000 (貸方)未成工事支出金 540,000

<工事完成基準による会計処理>
(1) 平成23年5月〜平成24年3月の間に発生した工事原価360,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 360,000 (貸方)工事未払金   378,000
     仮払消費税等    18,000
(2) 平成24年3月31日(決算日)において、完成工事原価は計上しない。
(仕訳なし)
(3) 平成24年4月〜平成25年3月の間に発生した工事原価540,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 540,000 (貸方)工事未払金    567,000
     仮払消費税等    27,000
(4) 平成25年3月31日(決算日)において、完成工事原価を計上する。
(借方)完成工事原価  900,000 (貸方)未成工事支出金 900,000



【事例II−1−13】未成工事支出金の計上と原価振替(2)

請負金額400,000千円(消費税別)、工期平成23年12月1日〜平成24年9月30日の工事を受注した。
工事総原価は360,000千円(消費税別)と見積もられた。
消費税の取扱いについては、簡略化のため未成工事支出金の全額が課税仕入れ等に該当するとみなしている。そのため、個々の仕訳に消費税の取扱いを付記していない。

<工事進行基準による会計処理>
(1) 平成23年12月〜平成24年3月の間に発生した工事原価108,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 108,000 (貸方)工事未払金   113,400
     仮払消費税等     5,400
(2) 平成24年3月31日(決算日)において、完成工事原価を計上する。
(借方)完成工事原価  108,000 (貸方)未成工事支出金 108,000
(3) 平成24年3月〜平成24年9月の間に発生した工事原価144,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 144,000 (貸方)工事未払金    151,200
     仮払消費税等     7,200
(4) 平成24年9月30日(竣工時)において、完成工事原価を計上する。
(借方)完成工事原価  144,000 (貸方)未成工事支出金 144,000

<工事完成基準による会計処理>
(1) 平成23年12月〜平成24年3月の間に発生した工事原価108,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 108,000 (貸方)工事未払金    113,400
     仮払消費税等     5,400
(2) 平成24年3月31日(決算日)において、完成工事原価は計上しない。
(仕訳なし)
(3) 平成24年3月〜平成24年9月の間に発生した工事原価540,000千円(消費税別)を計上する。
(借方)未成工事支出金 144,000 (貸方)工事未払金   151,200
     仮払消費税等     7,200
(4) 平成24年9月30日(竣工時)において、完成工事原価を計上する。
(借方)完成工事原価  252,000 (貸方)未成工事支出金 252,000



(3)税務処理

 未成工事支出金においては、その特性から以下(1)(3)のような税務上の論点があげられます。

(1)未成工事支出金から控除する仮設材料の価額(法基通2−2−6)

 建設工事用の足場、型枠、シート等のような仮設材料の取得価額を未成工事支出金に含めて経理処理している場合、建設工事等の完了または他の建設工事等の用に供するためこれらの資材を転送した場合に、当該未成工事支出金の金額から控除すべき仮設材料の価額については、以下a〜cのいずれかにより処理します。

 a. 当該仮設材料の取得価額から損耗等による減価の見積額を控除した額

 b. 当該仮設材料の損耗等による減価の見積りが困難な場合、工事の完了または他の工事現場等への転送のときにおける当該仮設材料の価額相当額

 c. 当該仮設材料の再取得価額に適正に見積もった残存率を乗じて計算した金額

(2) 木造の現場事務所等の取得に要した金額が未成工事支出金の金額に含まれている場合(法基通2−2−7)

 建設業者等が建設工事等の用に供した現場事務所、労務者用宿舎、倉庫等の仮設建物で木造のものの取得価額を、その建設工事等にかかる未成工事支出金の金額に含めている場合には、以下aとbに掲げる場合に応じ、それぞれ次の金額を当該未成工事支出金から控除します。この場合、その控除すべき金額を未成工事支出金から控除することに代えて、雑収入等として処理することも認められます。

 a. 当該建設工事等の完成による引渡しの日以前に当該仮設建物を他に譲渡し、または他の用途に転用した場合、その譲渡価額に相当する金額またはその転用のときにおける価額に相当する金額

 b. 当該建設工事が完成して引き渡された際に当該仮設建物が存する場合、その引渡しのときにおける価額に相当する金額

 当該仮設建物が取り壊されるものである場合には、その取壊しによる発生資材の価額として見積もられる金額

(3)金属造りの移動性仮設建物の取得価額の特例(法基通2−2−8)

 建設業者等が建設工事等の用に供する金属造りの移動性仮設建物については、その償却費を工事原価に算入します。ただし、この場合における当該建物の償却計算の基礎となる取得価額は、当該建物のうちその移動に際して継続して使用される部分の取得に要した額によることができます。

 

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