目次 Q2


Q2 事業税―これまでの法人事業税の問題点


Question

 これまでの法人事業税は何が問題ですか。



Answer

ポイント
1. 地方団体の行政サービスは安定的に供給されるため、地方税は、できるだけ安定的で変動の少ない税であることが望まれます。

2. 法人事業税は、各事業年度の所得を課税標準として課税されていたため、景気変動の影響を受けました。わが国の多くの法人が欠損法人で、法人事業税を負担していません。



解説

 地方団体は、福祉、教育、環境保全、産業・都市基盤整備、警察や消防・防災など、幅広い行政サービスを供給しています。地域における住民の日常生活や産業活動を支える地方団体の行政サービスは安定的に供給される必要があり、その財源の根幹をなす地方税は、できる限り、安定的で税収の変動が少ないものであることが求められます。

 しかし、従来の都道府県税の最大の税目である法人事業税は、各事業年度の所得を課税標準として課税されていました。そのため、景気変動の影響を受けやすく、景気の良いときは税収が増え、不況時には税収が落ち、不安定な状況にありました。また、企業の立地が大都市圏に集中する傾向があることから、法人事業税収入も特定の地域に集中し、地域間格差が生じるという問題がありました。

 教育、福祉、環境保全、警察などの地方の行政サービスは、安定的に供給されることが必要です。地方団体がその責任を十分に果たしていくためには、自主財源の根幹をなす地方税は、できるだけ安定的で、変動の少ない税であることが望ましいことはいうまでもありません。税収の安定性を向上させることが、地方分権を推進し、地方団体の自己決定権と自己責任のもとで、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることにつながります。

 法人事業税は、法人が行政から受ける幅広いサービスに着目して事業に対して課される税であることから、その課税標準は、法人の事業活動の規模をできるだけ適切に表すものであることが望ましいといえます。しかしながら、従来の法人事業税は、原則として法人の所得を課税標準としていたため、法人の所得という同一の課税標準に対して国税の法人税と地方税の法人事業税とにより重複的に課税される形となっていました。また、事業活動の規模との関係が適切に反映されず、本来の応益課税の性格から見て、望ましいあり方になっていなかったといえます。

 事業活動を行っている法人は、その事業活動の規模に応じて、地方の行政サービスから一定の受益を得ているものと考えられますが、わが国の法人の状況を見ると、6割を超える法人が欠損法人となっており、多くの法人が法人事業税を負担していません。欠損法人をはじめ、事業活動規模に比して所得が少ない法人は、その事業活動規模に相応しい法人事業税を負担していません。そのため事業活動規模に比して所得が大きい法人の負担が大きくなっていました。また、同一法人でも、特別損益の影響も含めて、年度間での納税額の変動が大きく、納税額が事業活動規模を反映したものとなりにくい状況にありました。

 地方団体の提供する行政サービスによって受益を得ている法人が、その受益に応じて税負担を分担する、税負担の公平が求められます。

 

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