目次 VI-1


VI.所得金額計算上の注意点


1 不動産所得となるもの・ならないもの

(1) 事業的規模の不動産貸付け
 不動産の貸付けによる所得は、事業的規模であっても不動産所得になります(所法26(1))。
注釈
 事業的規模かどうかは、専従者給与の必要経費算入(所法57)、資産損失の必要経費算入(所法51)、青色申告特別控除の適用(措法25の2)、延納利子税の必要経費算入(所令97)に関係してきます。

(2) 事業的規模の判定
 不動産の貸付けが事業的規模かどうかは、社会通念上の事業的規模に該当するかどうかによります(所基通26−9)。

(a) 社会通念上の事業規模とは、次により判定します。
(イ) 貸付資産の規模
(ロ) 賃貸料の収入状況
(ハ) 貸付資産の管理に係る特別の人的・物的施設の設置等

(b) 上記の判定が困難な場合
 建物
(イ)貸間・アパート等については10室以上
(ロ)独立家屋については5棟以上
注釈
共有者がいる場合
共有者がいる場合は、共有持分で按分した室数・棟数ではなく、実際の室数又は棟数により判定します。
混有している場合
貸室と貸家を両方所有している場合は、貸室2室を家屋1棟と換算して判定します。
      (例) 独立家屋3棟と貸室4室→3棟+(4室÷2)=5棟
 土地
土地の貸付は件数5を貸室1室と換算して判定します。
例えば、ガレージの場合は、50件以上貸しておれば事業的規模となります。
    (例) 50件→50÷5=10室相当
(国税庁見解・東京局質疑応答集より)

(c)  共有で建物を持っている場合には、共有者の共有持分を合計したところで「5棟10室」の判定を行います。(国税庁事務連絡=税務通信2394号)

(3) 不動産貸付けの所得区分
 不動産の貸付けであっても管理の態様、付随サービスの提供の状況等によって事業所得や雑所得になる場合があります(所基通26−1、26−3、26−4、26−7、26−8、27−2、27−3に例示があります)。なお、所得の帰属は、不動産所得となる場合は、その不動産の所有者、事業所得又は雑所得となる場合は、その事業を行う者となります(所基通12−1、12−2)。
 例えば、父名義の土地で青空駐車場を営んでいる場合は、その駐車場の名義が子供であっても、その所得は父の不動産所得となります。ただし、有蓋モータープール等である場合はその建物等の所有者の不動産所得となります。

(4) 食事を提供する下宿
 アパート、下宿等で食事を供さない場合の所得は、不動産所得ですが、食事を提供する下宿の場合の所得は、事業所得又は雑所得になります(所基通26−4)。

(5) ケース貸し
 ケース貸しの所得は、不動産所得となります(所基通26−2)。

(6) 不動産業者が販売目的で取得した不動産を一時的に貸し付けた場合
 不動産業者が販売の目的で取得した不動産を一時的に貸し付けた場合の所得は、事業所得になります(所基通26−7)。

(7) 広告等のため土地等を使用させる場合
 広告等のため、土地、家屋の屋上又は側面、へい等にネオンサインや広告看板を取り付けさせることによって受ける使用料は、不動産所得になります(所基通26−5)。
注釈
 浴場内、飲食店内の掲示広告の収入は事業所得になります(所基通27−5(4))。

(8) リゾートホテルの一室を貸し付けた場合
 保養の用に供しているリゾートホテルの一室を利用しない時に貸し付けた場合の所得は不動産所得となりますが、その場合に生じた赤字は、他の所得と通算することはできません(所法69(2))。

(9) 借地契約の更新料
 借地契約の更新料は不動産所得となりますが(所基通26−6)、更地価額の2分の1を超える更新料は、譲渡所得となります(所令79(1))。
注釈
 一定の要件に該当する場合は、臨時所得になることもあります(所基通2−37)。

(10) 管理責任等のサービスをしているモータープール
 モータープールで管理責任等のサービスをしている場合は、不動産所得ではなく、事業所得又は雑所得になります(所基通27−2)。

(11) 遺産分割協議ができていない不動産から生ずる所得
 遺産分割協議ができていない(未分割)不動産から生ずる所得は、各相続人が相続分に応じて申告することになります(民法898、所基通12−1)。

 

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