Q5 資本等の増加限度額 V-Q5
 
 株式交換・株式移転に際しての資本等の増加限度額が改正されたことによる会計処理と税務処理に与える影響について説明して下さい。

 

 会社法では、株式交換・株式移転に際しての資本等の増加限度額については、完全子会社となる会社の純資産額を基準とするのではなく、完全親会社となる会社が取得する株式の価額を基準としています(会768(1)二イ、773(1)五、445(5))。

 現行法では、株式交換や株式移転における完全親会社となる会社の資本増加限度額は、完全子会社となる会社の「現存する純資産額」が基準とされています(商357、367)。

 しかし、この基準では以下のような問題点があります。

(1)  会社の資本増加額は、新株発行、合併、分割と比較しても明らかなように、本来当該親会社自身が取得する財産に基づき決定されるべきものです。しかし、株式交換・株式移転の場合は、子会社の純資産が基準となっており、他の商法上の規律と異なっています。
(2)  現行法の「現存する純資産額」が、子会社の簿価純資産を指すのか、あるいは評価替え後の時価純資産を指すのか明確ではありません。
(3)  完全子会社において、取得の場合には、原則として取得する資産(株式交換・株式移転の場合は、完全子会社の株式)を完全親会社となる会社が支払う対価の公正価値で評価することとなるため、資本増加に関する評価方法が現行法の条文の文言とかけ離れてしまうことになります。

 そこで、会社法では、株式交換・株式移転に際しての資本等の増加限度額については、完全子会社となる会社の純資産額を基準とするのではなく、完全親会社となる会社が取得する株式の価額を基準として定めるものとしています。


1 会計処理

 企業結合会計基準及び結合分離適用指針案によれば、個別財務諸表上、取得(後述する逆取得を除く)における株式交換では、パーチェス法を適用した場合の取得価額で完全子会社株式を計上(企業結合会計基準三2(6)(1)、結合分離適用指針案110)し、株式移転(共同持株会社の設立形式をとる場合)では、いずれかの完全子会社を取得企業(企業結合会計基準三2(1))として取り扱い、取得企業の企業結合日における適正な帳簿価額による純資産額に基づき取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定し、パーチェス法を適用した場合の取得価額で被取得企業株式(他の完全子会社株式)を計上します(企業結合会計基準三2(6)(2)、結合分離適用指針案120、121)。

 ただし、株式交換において、完全子会社が取得企業となる場合(完全親会社が被取得企業となる、いわゆる逆取得の場合)には、完全親会社の個別財務諸表上における完全子会社株式(取得企業株式)の取得原価は、当該完全子会社(取得企業)の企業結合日における適正な帳簿価額による純資産額に基づいて算定されます(結合分離適用指針案118)。

 持分の結合における株式交換・株式移転では、完全子会社が企業結合日(株式交換または株式移転の日)前日に算定した適正な帳簿価額による純資産額に基づき完全子会社株式の取得原価を算定します(企業結合会計基準三3(6)(1)、結合分離適用指針案164)。

 なお、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引に関する会計処理は、別途規定(企業結合会計基準三3(7)、4、結合分離適用指針案185から261)されています。また、具体的な取扱い(増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金またはその他資本剰余金)等の取扱い)は、法務省令で定めることになります(会768(1)二イ、773(1)五、445(5))。

 株式交換において、会社法において取得(逆取得を除く)、あるいは、持分の結合と判断された場合の完全親会社における完全子会社の株式取得価額(資本等の増加限度額)の関係を図示すると、以下のようになります。


 (注)  上記の図は、完全親会社となる会社は完全子会社となる会社の株式を所有しておらず、かつ、株式交換交付金や代用交付自己株式はないものとしています。
また、具体的な資本の部の計数の取扱いについては、今後法務省令で規定されるため、上記の図は法務省令の取扱いと異なる可能性があることに留意して下さい。
 
 
2 実務への影響

 完全子会社となる会社が債務超過会社の場合、現行法では、完全親会社となる会社の資本増加限度額は、完全子会社の「現存する純資産額」であるためマイナスとなり、完全子会社の株式もマイナスとなるため、株式交換ができませんでした。しかし、会社法では、株式を取得するからには完全子会社の株式の価値はマイナスではなくゼロよりも大きいため、完全子会社となる会社が債務超過会社である場合も株式交換が可能という考えもあり、実務においては影響のある改正内容となっています。


3 税務処理

 株式交換・株式移転に関する現行の法人税法の取扱いは、原則としては株式交換も株式移転も譲渡取引であるとしており、交換あるいは移転した株式に含み益があれば、課税の対象となります。

 しかし、以下の一定の要件を満たす場合には、課税が繰り延べられます。

(1)  商法に定める株式交換・株式移転であること
(2)  完全親会社が完全子会社となる会社の株主から取得した子会社株式の受入価額を、当該株式の旧株主における帳簿価額以下とすることなど、一定の受入価額とすること(注)
(3)  完全親会社となる会社が株式交換・株式移転に際して現金等の株式以外の資産を交付する場合には、交付した資産の時価総額のうち、完全親会社の株式時価の占める割合が95%以上であること

 (注)  受入価額に関する要件は、完全子会社となる会社の株主数の区分に応じて、以下のように定められています。
 
完全子会社となる
会社の株主数
完全親会社における子会社株式の受入価額
50人未満 株式交換・株式移転直前の完全子会社となる会社の旧株主における帳簿価額以下
50人以上 完全子会社となる会社の簿価純資産価額以下

 前記(2)の要件を満たすため、現状でも税務申告書において申告調整(完全子会社となる会社の株主数が50人未満の場合において、完全親会社における子会社株式の受入価額を、税務上、株式交換・株式移転直前の完全子会社となる会社の旧株主における帳簿価額以下とするための申告調整)を行っている場合もあり、税務上の取扱いが変わらなければ、上記(2)の要件を満たす必要がある場合には、同様の申告調整をすることとなります。



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