現行商法上は、簡易組織再編行為の要件が、吸収合併、吸収分割、株式交換については、存続会社、承継会社、完全親会社となる会社の発行済株式総数の5%以下の株式の発行の場合、分割会社における簡易分割においては総資産の5%以下の資産の移転の場合とされており、これらの要件に該当する場合にのみ当該会社において株主総会の承認を要しないものとされています(商358(1)、374ノ6(1)、374ノ22(1)、374ノ23(1)、413ノ3(1))。
ところで、現行商法上は、定款の目的の範囲内であれば、会社が新規に投資をすることについては、取締役会または代表取締役の権限とされ、株主総会の決議を要しないものとされています。
このため、新株の発行(授権株式数を前提とすれば、最大発行済株式総数の300%まで発行可能(商166(4)等参照))や借財によって、資金を調達し、これを新規の投資に充てるという行為は、すべて取締役会限りで行うことができます。
これに対して、同一の事業を行う場合において、新規に投資するのではなく、すでに他社が行っている事業を組織再編行為により取得する形で事業投資をする場合には、5%を超える新株の発行を伴うときには株主総会の決議を要することとなります。このため、同一の事業を行うために会社が投資をしようとした場合には、新規に投資をした方が、他社の事業を組織再編行為により取得するよりも簡易な手続で行うことができることとなっています。
また、経営資源の選択と集中による効率的な経営が求められる近時の状況において、簡易組織再編につき株主総会の決議を要しない範囲を拡大すべきであるという実務上のニーズも高まっているところです。
このような状況を受けて、会社法では、吸収合併、吸収分割及び株式交換について、消滅会社等の株主等に対して交付する存続株式会社等の株式の数に1株当たりの純資産を乗じた金額、その他会社法第796条第3項第一号の各場合の額の、存続株式会社等の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額に対する割合が20%以下の場合には、存続会社等において株主総会の決議を経ることを要しないものとされました(会796(3))。
これは、実質的には、(1)存続会社等が合併等の対価として交付する存続会社等の株式の数の発行済株式総数に対する割合と、(2)合併対価等の対価として交付する存続会社等の株式以外の財産の純資産に対する割合の合計が20%以下の場合には、存続会社等において株主総会の決議を経ることが不要となるということを意味しています。なお、この20%という割合が存続会社等の定款で引き下げられた場合には、その割合に従うこととなります。この20%という割合を定款で引き上げることができるか問題となり得ますが、この割合の上限がないということになると、あまりに株主に大きな影響が生じることとなるし、簡易組織再編の異議要件等に鑑みると、消極に解すべきです。
上記は、営業全部の譲渡における譲受会社についても同様の手当がなされています(会468(1))。
以上は、存続会社等の側からみた簡易組織再編行為の要件緩和ですが、会社分割(吸収分割及び新設分割双方)における分割会社、及び営業の重要な一部を譲渡する株式会社についても、簡易組織再編行為の要件緩和がなされています。
すなわち、会社分割または事業譲渡(現行商法の営業譲渡のこと)により、承継会社または譲受会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、分割会社または譲渡会社の総資産の額(法務省令により規定される方法により算定される)の5分の1を超えない場合には、分割会社または譲渡会社における株主総会の決議は不要とされています(会784(3)、805、467(1)二)。なお、この20%という割合が存続会社等の定款で引き下げられた場合には、その割合に従うこととなります。この上限を引き上げることができるかどうかについては、存続会社等における場合と同様消極に解すべきと思われます。
なお、簡易組織再編の要件に合致する場合であっても、(1)組織再編行為に際して、存続会社等において差損が生じる場合(会796(3)但書、795(2)各号)、または(2)公開会社でない存続会社等が当該存続会社等の株式の発行または移転を伴う組織再編行為を行う場合(会796(3)但書、796(1)但書)には、当該存続会社等につき株主総会の決議を要するものとされている点には注意が必要です。 |