Q2 対価の柔軟化−会計・税務への影響 V-Q2
 
Question
 対価柔軟化が会計処理、あるいは税務処理に与える影響について説明して下さい。

 
Answer

 会社法により、吸収合併、吸収分割または株式交換の場合の対価を、存続会社等の株式に限定することなく、金銭その他の財産をもその対価とすることができるようになりました(会749(1)二、758四、768(1)二)。なお、対価柔軟化は、その適用時期が施行の日から1年間延長されました(会附則4)。

1 会計処理

 対価の柔軟化に関しては、吸収合併等に際して支払われる対価の種類により会計処理が異なることが、平成18年4月1日以降開始事業年度から適用される「企業結合に係る会計基準」(以下「企業結合会計基準」という)に規定されています。

 この企業結合会計基準によれば、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引(後述、参照)以外の企業結合(企業結合とは、ある企業(会社及び会社に準ずる事業体をいう)または、ある企業を構成する事業と他の企業または他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう(企業結合会計基準二1))に際して、支払われた対価のすべてが、議決権のある株式でない場合は、原則として、パーチェス法を適用することになります(企業結合会計基準三1(1)、企業結合に係る会計基準注解2)。

 企業結合に関しては、企業結合会計基準に関する「企業会計審議会の意見書の公表について(参考)」によれば、以下のように会計処理等することとなります。


◆取得と持分の結合の識別

 次の3要素を満たす場合には「持分の結合」と判定し、持分の結合と判定されなかったものは「取得」と判定されます。

 (1)  結合の対価が議決権のある株式である
 (2)  結合後の議決権比率が50:50の上下概ね5%以内
 (3)  (2)以外にも支配関係を示す一定の事実がない(取締役の員数等)

 共同支配企業(共同支配企業とは、複数の独立した企業により共同で支配される企業をいう(企業結合会計基準二6))の形成は持分の結合と判定します。また、ある企業結合を共同支配企業の形成と判定するためには、上記の要件(1)及び(3)を満たす必要があります。


◆取得の会計処理

 取得と判定された企業結合には、パーチェス法を適用します。

 パーチェス法とは、被結合企業から受け入れる資産、負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法(企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書二)です。なお、取得した資産・負債を時価で受け入れ、のれん(または負ののれん)が生じた場合は、20年以内に規則的に償却します。


◆持分の結合の会計処理

 持分の結合と判定された企業結合には、持分プーリング法を適用します。持分プーリング法とは、すべての結合当事企業の資産、負債及び資本を、それぞれの適切な帳簿価額で引き継ぐ方法(企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書二)です。


◆共通支配下の取引の会計処理

 共通支配下の取引(共通支配下の取引とは、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の企業により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的でない場合の企業結合をいう(企業結合会計基準二10))により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として移転前の簿価を引き継ぎます。

対価が議決権のある株式である(注1) No
取得
パーチェス法

対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)で引き継ぐ


Yes
 
結合後の議決権比率が50:50の上下概ね5%以内及び一定の要件を満たしている(注2) No


Yes
   
持分の結合
持分プーリング法

適切な帳簿価額で引き継ぐ
   

(注1)  企業結合に係る会計基準注解2によれば、企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であると認められるためには、同時に次の要件のすべてが満たされなければなりません。
  (1)  企業結合は、単一の取引で行われるか、または、原則として、一事業年度内に取引が完了する。
  (2)  交付株式の議決権の行使が制限されない。
  (3)  企業結合日において対価が確定している。
  (4)  交付株式の償還または再取得の取決めがない。
  (5)  株式の交換を事実上無効にするような結合当事企業の株主の利益となる財務契約がない。
  (6)  企業結合の合意成立日前1年以内に当該結合目的で自己株式を取得していない。
(注2)  一定の要件とは、支配関係を示す一定の事実が存在しないこと(以下のいずれにも該当しない場合(企業結合に係る会計基準注解4))です。
  (1)  いずれかの結合当事企業の役員もしくは従業員である者またはこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めている。
  (2)  重要な財務及び営業の方針決定を支配する契約等により、いずれかの結合当事企業の株主が他の結合当事企業の株主より有利な立場にある。
  (3)  企業結合日後2年以内にいずれかの結合当事企業の大部分の事業を処分する予定がある。
  (4)  企業結合の対価として交付する株式の交換比率が当該株式の時価に基づいて算定した交換比率と一定以上乖離し、多額のプレミアムが発生している。


◆三角合併等の取扱い

 子会社が親会社の株式を対価として他の企業と合併(企業結合)する、いわゆる三角合併などの場合には、取得と持分の結合の識別において、対価が議決権のある株式であるという対価要件を満さないため、常に当該子会社が他の企業を取得したものと判定されてしまいます(共通支配下の取引等に該当する場合を除く)。

 しかし、平成17年7月29日に公表された企業会計基準適用指針公開草案第8号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(案)」(以下「結合分離適用指針案」という)によれば、当該取引の実質は、親会社と他の企業との企業結合であるため、その実質に従い、連結財務諸表上、当該親会社と当該他の企業との企業結合とみなして判定し、その判定結果を当該子会社の個別財務諸表にも適用することとなりました(結合分離適用指針案9、329)。


2 税務処理

 現行の法人税法における合併及び会社分割の取扱いは、存続会社等の株式以外の資産(金銭等)の交付がないことのほか、一定の要件を満たす場合には、適格合併あるいは適格分割として、帳簿価額による資産等の引継ぎがなされたものとして、資産譲渡損益の計上が繰り延べられます。

 しかし、存続会社等の株式以外の資産(金銭等)を交付した場合には、非適格合併あるいは非適格分割として取り扱われ、資産の移転等は時価による資産の譲渡として取り扱われています。

 対価柔軟化により存続会社等の株式ではなく、金銭その他の財産もその対価として交付する場合の合併あるいは会社分割による資産の移転等は、非適格合併あるいは非適格分割として、時価による資産の譲渡として取り扱われ、資産の譲渡損益が発生します。また、この場合、株主において、株式譲渡損益及びみなし配当課税が生じることがあります。

存続会社等の株式以外の資産(金銭等)の交付がない No
非適格合併・非適格分割

資産譲渡損益を計上


Yes
 
一定の要件(注)を満たす No


Yes
   
適格合併・適格分割

資産譲渡損益の計上繰延

   

(注)  一定の要件については、合併あるいは会社分割それぞれに、企業グループ内であるか、あるいは共同事業を行うためか、といった詳細な要件が法人税法に規定されているため、慎重な検討が必要となります。

 また、株式交換・移転においては、子会社株式の税務上の受入価額により、課税が生じることがあります。なお、税務処理については、会社法の施行に対応した改正が行われなければ、対価の柔軟化を適用した組織再編行為を行っても、課税が生じることがあります。そのため、実務的には対価の柔軟化による組織再編行為が限られた場合になることが懸念されます。



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