Q4 会社の種類の変更 III-Q4
 
Question
 持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)間での会社の種類の変更について説明して下さい。また、会社の種類の変更により社員の責任内容が変化することになりますが、会社法はその場合の取引の相手方や既存の会社債権者の保護についてどのような規定を置いていますか。

 
Answer

1 定款の変更

 持分会社間では、基本的に、定款変更の手続を取れば、自由に会社の種類の変更は可能です。ただし、下記のうち、合同会社への会社の種類の変更の場合には、社員の出資に未履行のものがある場合には、当該定款変更は、未履行の出資について払込み・給付をした日に効力を生じるものとされています(全額払込主義)(会640(1))。

 1.  合名会社は、以下の定款変更をすることにより、下記各号記載の他の種類の持分会社となることができます(会638(1))。
 
 (1)  有限責任社員を加入させる定款変更
   合資会社
 (2)  その社員の一部を有限責任社員とする定款変更
   合資会社
 (3)  その社員の全部を有限責任社員とする定款変更    合同会社
 
 
 2.  合資会社は、以下の定款変更をすることにより、下記各号記載の他の種類の持分会社となることができます(会638(2))。

 (1)  その社員の全部を無限責任社員とする定款変更
   合名会社
 (2)  その社員の全部を有限責任社員とする定款変更
   合同会社
 
 
 3.  合同会社は、以下の定款変更をすることにより、下記各号記載の他の種類の持分会社となることができます(会638(3))。
 
 (1)  その社員の全部を無限責任社員とする定款変更
   合名会社
 (2)  無限責任社員を加入させる定款変更
   合資会社
 (3)  その社員の一部を無限責任社員とする定款変更    合資会社


2 有限責任社員か無限責任社員のいずれか一方のみになった場合

 合資会社の社員が、有限責任社員か無限責任社員のいずれか一方のみになった場合の処理については、下記のとおり取り扱われます。

【合資会社の有限責任社員全員が退社して、無限責任社員のみになった場合】

 この場合、現行商法では、原則として合資会社は解散します。ただし、残存する無限責任社員の一致をもって、新たに有限責任社員を加入させて会社を継続させることはできますし、有限責任社員を加入させなくても、無限責任社員の一致をもって、合名会社として会社を継続することもできます(商162(1)・(2))。

 他方、会社法では、このような場合会社は解散せず、合名会社として自動的に存続します。すなわち、このような場合には、当該合資会社は、合名会社となる定款変更をしたものとみなします(会639(1))。

【合資会社の無限責任社員全員が退社し、有限責任社員のみになった場合】

 この場合、現行商法では、原則として合資会社は解散します。ただし、残存する有限責任社員の一致をもって、無限責任社員を加入させて会社を継続することもできます(商162(1))。

 他方、会社法では、このような場合、会社は解散せず、合同会社として自動的に存続します。すなわち、当該合資会社は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなします(会639(2))。この場合、社員の出資のうち未履行のものがある場合には、原則として、当該定款変更をしたものとみなされる日から1か月以内に、払込み・給付を完了しなければなりません(全額払込主義)(会640(2))。この第640条第2項により全額払込主義が強制されることによって、合資会社の有限責任社員(直接有限責任)から合同会社の有限責任社員(間接有限責任)へ社員の責任が変質し、合資会社から合同会社へと会社の種類の変更を行うことができるのです。


3 会社の種類の変更に伴う取引相手方・会社債権者の保護

 下記の諸規定により、会社の種類の変更に伴う取引相手方・会社債権者の保護がはかられています。


◆商号の使用

 会社は、その商号中に、各会社の種類に従い、合名会社、合資会社、合同会社の文字を使用しなければなりません(会6(2))。


◆社員の責任

(1)  合資会社の有限責任社員が自らを無限責任社員であると誤認させる行為をした場合
この場合には、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社と取引をした者に対し、無限責任社員と同一の責任を負います(すなわち、有限責任社員が無限責任を負うことになる)(会588(1))。
(2)  合資会社または合同会社の有限責任社員が自らの責任の限度を誤認させる行為をした場合
この場合には、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社または合同会社と取引をした者に対し、その誤認させた責任の範囲内で当該合資会社または合同会社の債務を弁済する責任を負います(すなわち、有限責任社員が、自分の限度を超える責任を負うことになる)(会588(2))。
 

◆既存の会社債権者の保護

 既存の会社債権者の保護については、特別の債権者保護手続は規定されていません。これは会社法第583条第3項・612条第2項の規定の適用によって保護をはかる趣旨と考えられます(江頭憲治郎「『会社法制の現代化に関する要綱案』の解説〔VIII〕」商事法務1729号12ページ)。

 すなわち、無限責任社員が有限責任社員になった場合であっても、当該有限責任社員は、その旨の登記前に生じた会社の債務については、無限責任社員として当該債務を弁済する責任を負います(請求・請求予告がなければ、当該責任は登記後2年間で消滅)(会583(4))。

 また、無限責任社員が退社した場合には、退社した無限責任社員は、その登記前に生じた会社の債務について、引き続き無限責任を負います(請求・請求予告がなければ、当該責任は登記後2年間で消滅)(会612(2))。



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