現行の特別清算手続は、解散をした株式会社について、当該会社の財務状況が債務超過の疑いがあるという事実に基づいて、債権者の利益を保護するという観点から、通常の清算手続をより厳格化したものであって、特殊な清算手続であるというのが基本的枠組みです。
会社法は、こうした現行の特別清算の基本的枠組みを維持した上で、特別清算における個別の手続・制度の見直しを行ったものです。その見直しの概要は次のとおりです。なお、理論上の問題を含む改正点については、後に個別に説明します。
特別清算開始申立事件は、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄とするという現行法の立場を維持しつつ、子会社及び連結子会社について管轄の特例を設けました。すなわち、親会社等について、特別清算事件、破産事件、再生事件または更生事件が係属している場合には、当該裁判所が子会社・関連会社の特別清算事件を処理できるように管轄の特例を設けました。
特別清算事件に関する記録の閲覧等について、現行法では、非訟事件における記録の閲覧等に関する解釈に基づき極めて制限的な運用がなされているところ、情報開示によって利害関係人の保護をはかるとの観点から、裁判所に提出され、また裁判所が作成した文書の開示を基本に、記録の閲覧等の制度が設けられました。
特別清算開始の申立は、現行法上、特別清算開始の命令前は取り下げることができるが、命令後は確定前でも取り下げることができないと解釈されていたところを明文化するとともに、特別清算開始の命令前であっても、一定の場合には、裁判所の許可がないと取下げができないものとされました(会513)。
清算の監督上必要な処分等(第7款)として、特別清算開始の命令前及び命令後に裁判所が行える処分等を整備・拡充し、債権者の利益を保護するために迅速・的確な対応をとり得るようにしました。なお、会社の財産の保全処分等(会540(2)、541(2)及び542(2))は、特別清算開始命令後にされる処分を同命令前に前倒しするものですので、裁判所の特別清算処分(会540ないし543及び545)とともに、清算の監督上必要な処分等(第7款)としてまとめられました。ただし、会社の役員の責任の免除の取消しについては、制度を抜本的に改めました。
特別清算開始の条件について、現行の特別清算に関する通説的見解に従って、これを整備し、明文化しました。これによって、従前、特別清算の見込みがないことを理由として入口段階で特別清算開始の申立の途が閉ざされる可能性があった点が改善されるに至り、特別清算開始申立の間口が広がったといえます。
現行の特別清算手続は、あくまで通常清算手続の特則であるとの基本的枠組みの下に構成されていたため、別除権を除くすべての債権がその手続の下に置かれるものとされていました。しかしながら、非訟事件手続法第138条ノ13の規定を手掛かりとして、特別清算のために生じたる債権及び特別清算の手続の費用は、この手続の効力が及ばず、随時弁済をなし得るというのが通説的見解であり、実務の運用でした。
会社法は、これまでの取扱いを認めることとしましたが、かかる結論を、いわば裏から認めるという迂遠な手法を採用しています。すなわち、改正法は、特別清算手続は通常清算手続の特則であるという基本的枠組みとの整合性をはかるために、解釈をもって上記結論を導き出すことができるように、かかる結論を導く手掛かりとなる条文をいくつか設けたのです。と同時に、改正法では、同じ手法の下に、労働債権について、現行法上では協定の中で多少の有利な取扱いをし得るにとどまっていたところ、これを改め随時弁済をなし得るものとしました。
相殺の禁止について、現行の特別清算においては、もともと商法第456条第1項が破産法の相殺禁止に関する条文(改正前破産法104、新破産法71・72)を準用していたことから、破産法と同一の規制となっていました。そこで、改正に際して、破産手続と特別清算手続の性格の違いなどに照らして相殺禁止規制の範囲を異ならしめるべきか否かが検討されましたが、結局、十分な成案に至りませんでした。そこで、特別清算が破産に移行した場合に、彼此の取扱いが異なるとかえって混乱の原因になるなどの点が考慮されて、破産法第71条及び第72条とほぼ同一内容の条文(会517及び518)が設けられるに至りました。
特別清算開始の命令があったときの他の手続に対する効力は、現行制度においても認められていたところですが、会社法では、従前の制度を整備・拡充しました。なお、他の手続の中止命令(会512)については、債権者等に申立権を認めた点は新たなものです。
現行の特別清算において清算人の行為の制限とされていたものは、会社法では、特別清算会社の行為の制限という形に改められ、その整備・充実がはかられました。ただし、裁判所の許可制度を原則とし、監督委員の同意制度は例外的なものとしています。なお、営業譲渡については規制が若干付加されました。
債権者集会に関しては、これまでの実務を追認する形で、規定の明確化・整備・充実がはかられています。
これまでの監督委員は債権者集会で選任されていたところ、裁判所が選任するものと改められました。また検査役は、調査委員という名称に改められました。監督委員・調査委員のいずれについても規定が整備されています。
協定については、可決要件のうち総債権額に関する要件が、総債権額の4分の3から3分の2に引き下げられるとともに、認可要件が明文化されました。
特別清算の終了に関する規定が整備・充実されています。なお、現行法において、協定が否決されたとき、または協定不認可の決定が確定したときの取扱いについて明文の規定がなく解釈に委ねられていた点を、明文化し、会社に破産手続開始の原因となる事実があるときは、特別清算を打ち切り、破産手続に移行することができるようにしました。 |