1 弁済責任の対象となる剰余金分配の範囲と過失責任化
現行法では、商法第266条第1項第一号において、事前の財源規制に違反した違法な配当議案を株主総会に提出した取締役、または、違法な中間配当を行った取締役は、会社に対して、違法に配当または分配した額について弁済責任を負うことになっています。
この責任は、債務不履行責任である任務懈怠責任とは異なった債権者保護のための特別の責任であり、一般的に無過失責任(故意・過失がなくても責任を負う)と解されていました。取締役がこのように厳格な責任を負う理由は、自ら業務執行を担当すると同時に、取締役会の構成員として自らの業務執行を監督する立場にもある、いわゆる株式会社における自己監視の構造にあると考えられます。しかしながら、これについては従来より、厳格すぎるとの批判や、委員会等設置会社の執行役の責任が過失責任であることとの調整が必要であるとされていましたが、会社法では、機関設計の如何にかかわらず、これらの責任は過失責任であることを明確にしました。
また、会社法では、自己株式の有償取得も剰余金の分配として整理して、統一的に財源規制をかけることとしたため、この違法な剰余金の分配に係る責任には、当然として、自己株式の有償取得によるものも含むことになりました(会462(1)一〜五)。
2 責任を負うべき取締役等の範囲
現行法では、委員会等設置会社以外の会社については、上記の取締役のほか、商法第266条第2項・3項により、違法な配当議案の決定または違法な中間配当に関する取締役会決議において賛成した取締役は特別の弁済責任を負う者の中に含まれ、議事録に異議をとどめなかった取締役も当該決議に賛成したものと見なされます。
一方、委員会等設置会社では、取締役が計算書類の作成や分配行為を行わないことを理由として、特別の弁済責任を負う者は、違法配当等に関する議案を取締役会に提出し、または実際に違法な配当等を行った執行役に限られており、委員会等設置会社以外の会社とで取扱いの差異が生じていました。
会社法では、この弁済責任の重要性に鑑み、現行の委員会等設置会社以外の会社の規定に合わせることとし、分配議案の株主総会への提出に同意した取締役及び取締役会の決議に賛成した取締役についても、同様の弁済責任を負わせることとし、これらの者は、連帯債務者とすることにしました。
3 責任の減免について
現行法では、一般的な債務不履行責任とは異なる債権者保護のための特別の責任については、一部免除制度の対象にされていません。この点は、この責任が過失責任とされている委員会等設置会社においても同様であり、会社法においても、同様の取扱いがされています(会462(3))。
一方、現行法では、違法配当等に係る弁済責任についても、取締役の他の対会社責任一般の場合と同様、その全額について、総株主の同意があれば免除できることとされています(商266(5))。しかし、この取扱いについては、特に財源規制に違反して分配された部分について、会社から、または会社の債権者から返還を請求される立場にある株主が免除することができることについて問題があるとの指摘がありました。
会社法では、上記の指摘等に鑑み、分配額に係る弁済責任のうち分配可能額を超えて分配された部分については、株主全員による免除を認めないこととしました(会462(3)但書)。 |