1 新しく会計参与という機関を設置した趣旨
会計参与とは、取締役(委員会設置会社においては執行役)と共同して、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類を作成する会社の機関であり(会374(1))、今回の改正において新たに設置を認められたものです。
近年は、多発する企業不祥事等への反省から、会社における情報開示の正確性・透明性が重視され、会計監査人による監査を充実させるなどの商法・証券取引法の改正が頻繁に行われています。
しかし、大会社や上場企業ばかりでなく、中小企業においても、計算書類の記載の正確性を担保することにより、株主・会社債権者の保護をはかることが重要です。
そこで、会社法では、主に会計監査人の設置されていない中小会社を念頭に置いて、専門知識を有する公認会計士・税理士等の有資格者が、取締役・執行役と共同して計算書類を作成し、取締役・執行役とは別に計算書類を保存し、株主等に対して開示する義務を負担することにより、計算書類の虚偽記載等を防止してその正確性を担保し、もって会社の計算に対する信頼を確保することを目的として、会計参与制度を設けることとしたものです。
ただし、会計参与の設置を強制するものではなく、会社法では、株式会社は、公開・非公開の区別あるいは会社の規模等にかかわらず、任意に会計参与を設置する旨の定款の定めを置くことができる(会326(2))と規定しています。
2 資格・任期・選解任の要件について
◆会計参与の資格
会社法は、会計参与の資格について、公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人でなければならないと規定しています(会333(1))。会計・税務の専門知識を有する有資格者を計算書類の作成に関与させ、もって計算書類の正確性を高めるという趣旨に基づく要請です。
なお、監査法人または税理士法人が会計参与に選任された場合には、その社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選定し、これを会社に通知しなければならないとされています(会333(2))。
また、株式会社またはその子会社の取締役、監査役もしくは執行役または支配人その他の使用人である者は会計参与になることはできないとして、兼任禁止の規定が置かれています(会333(3)一)。これは、会計参与の地位の独立性を保つための要請であり、ひいては計算書類に対する信頼性を確保するための規定です。
そのほか、欠格事由として、(1)業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者、(2)税理士法第43条の規定により同法第2条第2項に規定する税理士業務を行うことができない者、については会計参与となることができないと規定されました(会333(3)二、三)。
◆会計参与の任期
会計参与の任期については、取締役の任期に関する規定(会334(1))が準用されています。したがって、その任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであるが、非公開会社においては定款の定めにより任期を10年まで伸長できることになります。
なお、会計参与の任期を取締役の任期と連動させる必要はないと解されるため、非公開会社においては、取締役の任期を伸長するかどうかに関わりなく、最長10年の範囲内で会計参与の任期を定めることができるものと考えられます。
◆会計参与の選任・解任の要件
会計参与の選任・解任の要件についても、取締役の場合と同様です(会329、339)。したがって、株主総会の普通決議によって選任・解任することができます。監査役については、その独立性を維持するため、特別決議によらなければ解任できないとされていますが(会309(2)七)、会計参与にはそのような定めはありません。
なお、会社法においても、従前と同様、会計監査人の選任・解任については、監査役の同意が必要とされていますが(会344)、会計参与についてはかかる規定は置かれていません。
ただし、会計参与は、株主総会において、その選任もしくは解任または辞任について意見を陳述する権利が認められています(会345(1))。
3 職務・権限について
◆会計参与の職務
会社法は、会計参与の職務について、取締役(委員会設置会社においては執行役)と共同して計算書類を作成することと規定しています(会374(1)・(6))。
監査役・会計監査人が、取締役の作成した計算書類を外部の立場から監査することによってその適正性を担保するものであるのに対し、会計参与は、計算書類の作成者である取締役と共同して計算書類を作成することにより、いわば内側からその適正性を担保することになります。さらに、前述したとおり、会計参与は財務・会計の専門家であることが資格要件とされていますから、専門的な知識を生かして正確かつ適正な計算書類を作成する義務があり、実質的には主導的な立場で計算書類を作成することが期待されているといえます。
そのために、会計参与は、計算書類を承認する取締役会には出席しなければならず、必要があるときは意見を述べなければならないとされています(会376(1))。
また、会計参与報告を作成し(会374(1))、計算書類等及び会計参与報告を所定の期間(各事業年度に係る計算書類等については定時株主総会の日の1週間前から5年間、臨時計算書類等については作成した日から5年間)備え置き、株主及び債権者から閲覧・謄本交付請求があった場合には、これに応じなければなりません(会378(1)・(2))。会社とは別に会計参与のもとに計算書類を保管させ、株主及び債権者の閲覧対象とすることで、作成後の計算書類の改ざん等を防止することを目的とするものです。
そのほか、計算書類の共同作成者である会計参与は、取締役等と同様、株主総会における説明義務も負うとされています(会314)。
◆会計参与の権限
会計参与は、取締役と共同して、しかも専門家としての知見をもって適正に計算書類を作成する義務があります。
そのために必要な権限として、会計参与には、当該会社の会計帳簿を閲覧・謄写請求する権利(会374(2))、当該会社もしくはその子会社に対して会計の報告を求め、業務及び財産状況を調査する権利(会374(2)・(3))が認められています。
また、会計参与は、取締役と共同して計算書類を作成するにあたり、取締役の意見を異にする場合には、株主総会において自らの意見を述べることができます(会377(1))。
4 会計参与の会社及び第三者に対する責任について
会計参与の会社・第三者に対する責任については、社外取締役と同じ内容の規律となっています。
◆会社に対する責任
会計参与は、その任務(計算書類の共同作成)を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うとされています(会423)。これは過失責任です。
この責任は、総株主の同意がなければ免除できませんが(会424)、当該任務懈怠行為が故意または重大な過失によるものでない(すなわち軽過失による)場合には、株主総会の決議(会425)、定款規定に基づく取締役会の決議(会426)または定款規定に基づく責任限定契約(会427)によって、その責任を一部減免することができます。その減免の限度は社外取締役の場合と同様であり、報酬の2年分を超える部分につき損害賠償責任を減免することができることになります。
また、会計参与の会社に対する責任は、株主代表訴訟の対象とされています(会847)。
◆第三者に対する責任
会計参与が、その職務を行うにつき故意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うとされています(会429(1))。
また、会計参与が、計算書類及び附属明細書、臨時計算書類ならびに会計参与報告に虚偽の記載または記録をした場合にも、その行為につき注意を怠らなかったことを証明しない限り、それによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うとされています(会429(2)二)。 |